不当利得返還請求とは? 使い込まれた遺産を取り戻す方法・注意点 | ベンナビ弁護士保険  
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不当利得返還請求とは? 使い込まれた遺産を取り戻す方法・注意点

一部の相続人が遺産を使い込むトラブルは、遺産相続においてよく見られます。

もし他の相続人に遺産を使い込まれたら、不当利得返還請求によって遺産を取り戻しましょう。

不当利得返還請求を行うに当たっては、法律上の注意点を踏まえて対応する必要があるため、弁護士への相談をおすすめします。

今回は不当利得返還請求の要件・範囲・消滅時効・手続きや、他の相続人が遺産を使い込んだ場合の対処法などを解説します。

【注目】使い込まれた遺産を取り戻したいあなたへ

使い込まれた遺産を取り戻すために不当利得返還請求をしたくても、方法がわからずに納屋でいませんか?

結論から言うと、不当利得返還請求で遺産を取り戻したいなら、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 不当利得返還請求の方法や流れを教えてもらえる
  • 弁護士に手続きを依頼すべきか判断できる
  • 依頼した場合の弁護士費用がわかる
  • 依頼すれば、有利な条件で交渉を進めてもらえる可能性が高まる

ベンナビ相続では、不当利得返還請求を得意とする弁護士をあなたのお住まいの地域から探すことができます。無料相談・電話相談などに対応している弁護士も多いので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

不当利得返還請求とは

「不当利得返還請求」とは、法律上の原因なく利益を得た者に対して、それによって損失を受けた者が利益の返還を請求することをいいます(民法第703条、704条)。

特に相続の場面では、遺産を使い込んだ一部の相続人に対して、他の相続人によって不当利得返還請求が行われることがあります。

遺産分割前の相続財産は、すべての相続人の共有です(民法第896条)。

したがって、相続財産の処分は原則として全相続人の合意による必要があり(民法第251条1項)、一部の相続人が勝手に相続財産を処分することは認められません。

もし一部の相続人が遺産を使い込んだ場合、その相続人は法律上の原因なく利益を得る反面、相続財産に対して損失を与えたことになります。

この場合、相続財産の共有者である相続人は、遺産を使い込んだ相続人に対して不当利得の返還を請求できます。

不当利得返還請求の要件

不当利得返還請求の要件は、以下の4点です。

不当利得の返還を請求する側は、①~④の4つの要件を立証する必要があります。

  1. 被請求者が請求者の財産・労務によって利益を受けたこと
  2. 請求者が損失を受けたこと
  3. 利益と損失の間に因果関係があること
  4. 利益に法律上の原因がないこと

 被請求者が請求者の財産・労務によって利益を受けたこと

1つ目の要件は、請求を受ける側(被請求者)が請求する側(請求者)の財産または労務によって利益を受けたことです。

(例)

  • 他人の所有物を売却して、その代金を得た
  • 他人に支払われるはずだった金銭を代わりに受け取り、そのまま着服した

など

遺産分割前の相続財産を勝手に処分した場合、他人と共有している相続財産によって利益を得ているため、上記の要件を満たします。

請求者が損失を受けたこと

2つ目の要件は、請求者が損失を受けたことです。

(例)

  • 自分の所有物を勝手に売却され、その所有権を失った
  • 支払いを受けられるはずだった金銭が他人に対して支払われ、回収不能となった

など

遺産分割前の相続財産が勝手に使い込まれた場合、その分相続財産は目減りして共有者である相続人に損失が生じるので、上記の要件を満たします。

利益と損失の間に因果関係があること

3つ目の要件は、被請求者の利益と請求者の損失の間に因果関係があることです。

(例)

  • 被請求者が請求者の所有物を勝手に処分したことにより、被請求者は代金を利得した反面、請求者はその所有権を失った
  • 請求者に支払われるはずだった金銭が被請求者に支払われたことにより、被請求者はその金銭を利得した反面、請求者は支払いを受けられなくなった

など

遺産分割前の相続財産が勝手に使い込まれた場合、使い込んだ相続人の利益と相続財産の損失は表裏の関係にあるため、上記の要件を満たします。

利益に法律上の原因がないこと

利益と損失の間に因果関係があるとしても、それが法律上の原因によるものであれば、利益を得た側はそれを保持する権利があります。

たとえば贈与によって財産が移転した場合、贈与を受けた側は財産を取得する利益を得ます。

しかし、その利益は贈与契約という法律上の原因に基づくものであるため、不当利得に当たりません。

一方、契約をはじめとする法律上の原因が何ら存在しないにもかかわらず、一方の損失によって他方が利益を得た場合、その利益は不当利得に該当します。

利益に法律上の原因がないことについては、請求者の側に立証責任があると解されています(最高裁昭和59年12月21日判決)。

つまり、被請求者が利益を保持する法律上の原因がないこと(請求者が権利者・所有者であるなど)を請求者が立証しない限り、その利益には「法律上の原因がある」と判断され、不当利得返還請求が棄却されることになります。

不当利得返還請求が認められる利益の範囲

不当利得返還請求が認められる利益の範囲は、その利益に法律上の原因がないことについて、利得者が善意・悪意のいずれであったかによって異なります。

なお、善意・悪意の判断の基準時は、問題となる利益を受けた時点です。

利得者が善意の場合|現存利益のみ

利益を受けた時点で、その利益に法律上の原因がないことを利得者が知らなかった場合(=善意)、利得者は損失者に対して、現存利益の範囲内で返還すれば足ります(民法第703条)。

「現存利益」とは、利得者の元に現に残っている利益のことです。

たとえば遺産に含まれる美術品を、相続人が自分の物として、知人に無償で贈与したとします。

この場合、美術品を自分の物にしたことが不当利得に当たるとしても、相続人の元に現存利益はありません。

したがってこの相続人が、美術品は(遺産ではなく)自分の物であると信じていた場合には、美術品を遺産へ返還する義務を負いません。

これに対して、上記のケースにおいて、相続人が美術品を知人に有償で譲渡したとします。

この場合は原則として、譲渡対価に当たる金銭につき現存利益が認められます。

生活費・借金の返済・税金の支払いなど、生活上必要な支出に金銭を充てたとしても、現存利益の消滅は認められません。

別の財産を当該支出に充てることを免れた点につき、現存利益があると評価すべきだからです。

一方、不当利得に当たる金銭を浪費した場合には、例外的に現存利益がないものとみなされます(賭博に費消したケースなど。最高裁昭和50年6月27日判決)。

このように、利得者が善意である場合の不当利得返還請求においては、現存利益の範囲が問題になることが多いです。

利得者が悪意の場合|利益全額+利息+損害

利益を受けた時点で、その利益に法律上の原因がないことを利得者が知っていた場合(=悪意)、利得者は損失者に対して、その受けた利益全額に利息を付して返還しなければなりません。

その上で、損失者がなお損害を受けている場合には、その損害についても賠償する義務を負います民法第704条)。

たとえば遺産に含まれる預貯金1000万円を、相続人が悪意で勝手に使い込んだとします。

この場合、相続人は以下の金銭を遺産へ返還しなければなりません。

  • 1000万円
  • 法定利率(年3%。民法第404条)に従って計算した、請求時から支払済みまでの期間に対応する利息
  • その他、使い込みによって相続財産が被った損害(裁判費用など)

不当利得返還請求権の消滅時効(期限)

不当利得返還請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効消滅します(民法第166条1項)。

  • 不当利得返還請求権を行使できることを知った時から5年

(例)遺産が使い込まれたこと、および使い込んだ相続人を知った時から5年

  • ②不当利得返還請求権を行使できる時から10年

(例)遺産を使い込まれた時から10年

不当利得返還請求権の時効消滅を阻止するためには、内容証明郵便による催告(民法第150条1項)や訴訟の提起(民法第147条1項1号)など、時効の「完成猶予」の効果を生じさせる手続きをとる必要があります。

特に、相続発生後に時間が経ってから遺産の使い込みが判明した場合などには、お早めに弁護士までご相談ください。

不当利得返還請求の手続き

不当利得返還請求は、主に以下のいずれかの手続きによって行います。

  1. 相対交渉による請求
  2. 訴訟による請求

相対交渉による請求

遺産の使い込み問題の早期解決を目指すためには、使い込んだ相続人との間で相対交渉をすることが考えられます。

相続人が自発的に遺産の返還に応じれば、スムーズに遺産分割協議へと移行できるでしょう。

不当利得返還請求の相対交渉を成功させるには、不当利得の十分な証拠を提示して、言い逃れはできないと理解させることが大切です。

そのためには、被相続人口座の入出金履歴などから、遺産の動きを十分に調査する必要があります。

訴訟による請求

遺産を使い込んだ相続人が返還に応じない場合には、訴訟によって不当利得返還請求を行うことが考えられます。

訴訟は、裁判所で行われる公開の紛争解決手続きです。裁判所に訴状を提出し、口頭弁論期日において法律上の要件を立証して、不当利得の返還を命ずる判決を求めます。

訴訟において不当利得の返還を命ずる判決を得るためには、法律上の要件に沿った厳密な主張・立証をしなければなりません。

訴訟手続き自体も複雑かつ専門的な側面がありますので、弁護士への相談をおすすめします。

他の相続人が遺産を使い込んだ場合の対処法

遺産分割協議を行うに当たり、他の相続人による遺産の使い込みが判明した場合には、主に以下の2つの対処法が考えられます。

  1. 不当利得返還請求(または不法行為に基づく損害賠償請求)
  2. 使い込まれた遺産が存在するものとみなして遺産分割をする

 不当利得返還請求(または不法行為に基づく損害賠償請求)

1つ目は、使い込んだ遺産を実際に返還させる方法です。

法律構成としては、これまで解説した不当利得返還請求のほか、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求も選択できます。

両方の法律構成を併せて主張することも可能です(二重取りは不可)。

不当利得と不法行為は法律上の要件が異なるので、事案に応じて適切な方を選択する必要があります。

法的な判断が求められるので弁護士に相談することをおすすめします。

 使い込まれた遺産が存在するものとみなして遺産分割をする

2つ目の方法として、使い込まれた遺産が存在するものとみなして遺産分割をすることも認められています民法第906条の2)。

この場合、原則として共同相続人全員の同意が必要です(同条第1項)。

ただし、遺産を使い込んだ相続人の同意は必要ありません(同条第2項)。

使い込まれた遺産については、使い込んだ相続人が取得したものとして遺産分割をすることになります。

(例)

  • 相続人は配偶者A、子B、子C
  • 現存する相続財産の金額が4000万円
  • Bが使い込んだ相続財産の金額が1000万円

→法定相続分(A:2分の1、B:4分の1、C:4分の1)に従って遺産分割をする場合、遺産配分は以下のとおり

  • A:2500万円
  • B:1250万円(使い込んだ1000万円を含むため、実際に取得できるのは250万円)
  • C:1250万円

使い込まれた遺産について不当利得返還請求をする場合のポイント

他の相続人が使い込んだ遺産について不当利得返還請求をする際には、以下のポイントに注意して対応しましょう。

弁護士に依頼すれば、これらの注意点を踏まえた適切な対応が期待できます。

①    お金の流れを徹底的に調査する

使い込みの全容を把握するには、遺産に属するお金の流れを徹底的に調査する必要があります。弁護士の力を借りながら、あらゆる手段を用いて調査を尽くしましょう。

②    使い込みの悪意を立証する

遺産を使い込んだ相続人が悪意であったことを立証できるかどうかにより、返還を請求できる不当利得の額が変わる場合があります。不当利得の前後の事情などを分析して、使い込みをした相続人の悪意を立証するための戦略を立てましょう。

③    消滅時効に注意する

消滅時効が完成すると、不当利得の返還を請求できなくなってしまいます。特に時間が経ってから遺産の使い込みが判明した場合には、速やかに弁護士へご相談ください。

④相続税申告の期限に注意する

遺産の使い込みに関する問題が解決しているか否かにかかわらず、相続税申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。期限までに遺産分割が完了しない場合は、法定相続分に従って遺産を相続したものとみなして、暫定的に相続税申告を行う必要があります(後に更正の請求または修正申告によって調整可能)。

期限を徒過すると加算税を受ける可能性があるため、早めに税理士へ相談すべきです。弁護士に相談すれば、税理士の紹介も受けられる場合があります。

不当利得返還請求を依頼する弁護士を探すなら「ベンナビ相続」

他の相続人による遺産の使い込みが判明したら、弁護士に不当利得返還請求などによる解決を依頼しましょう。

依頼先の弁護士に心当たりがない場合には、「ベンナビ相続」を利用するのが便利です。

相談内容や地域に応じて簡単に弁護士を検索でき、電話やメールにて直接相談できます。

遺産の使い込みに関するトラブルにお悩みの方は、「ベンナビ相続」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。

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