遺産相続トラブルのよくあるケースと解決方法｜弁護士との相談窓口も紹介

遺産相続は、金銭が絡む取り組みとなるため、親族の間でも争いに発展するケースが多くあります。

そのため、遺産相続トラブルに巻き込まれるのを懸念している相続人の方や、すでにトラブルが発生しているという方もいるのではないでしょうか。

本記事は、遺産相続トラブルの現状や事例とその解決方法を具体的に示し、さらには弁護士や専門家への相談窓口を紹介します。

本記事を通じて、遺産相続のトラブルを避けるための知識と円満な解決への道筋を見つける参考にしてください。

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統計で見る遺産相続トラブルの現状

遺産相続トラブルとは、相続人間で遺産の分け方や遺言の有効性などについて争いが起こることです。

遺産分割事件の件数や遺産額の内訳は、裁判所のホームページにある「司法統計」から調べることができます。

2020年度の遺産分割事件の件数

司法統計によると、2020年度（令和2年度）の遺産分割事件の件数は、全国で11,879件でした。

このうち、調停事件が10,960件（92.3%）、審判事件が919件（7.7%）となっています。

さらに、調停事件の認容・調停成立率は77.9%、審判事件の審判成立率は62.8%でした。

2020年度の遺産分割事件の遺産額の内訳

続いて、2020年度（令和2年度）の遺産分割事件のうち、認容・調停成立で遺産額が明らかになったものは6,447件でした。

その内訳は、下表のとおりです。

遺産額	件数
1,000万円以下	2,017件https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/279/012279.pdf
5,000万円以下	2,492件
1億円以下	655件
5億円以下	369件
5億円を超える	37件
算定不能・不詳	237件

相続トラブルに発展しやすいケース

遺産相続において、金額の大小に関わらずトラブルが発展しやすいのは、感情や関係性の複雑さが影響を及ぼすためです。

相続は財産の分配だけでなく、故人とのつながりや家族内の動向に深く関わるものであり、物質的な価値だけでなく感情的な価値も含まれることがあります。

このため、相続人が財産の評価や期待、希望、不平等感に関して異なる見解を持つことがあり、これが金額に関係なくトラブルの要因となりやすくなります。

金額の大小にかかわらず、故人との思い出や家族の関係性が絡む遺産相続のトラブルの実例を通じて、感情や人間関係の影響を理解し、円満な解決への手がかりを探っていきましょう。

相続人が不仲・疎遠のケース

相続人同士の葛藤や疎遠な関係が存在する場合、相続トラブルはより深刻化する可能性があります。

このような状況では、円満な遺産分割が難しくなる要因が複数考えられます。

まず、相続人間での意思疎通が不足していると、遺産に対する異なる期待や要望が生じ、誤解や不信感が広がる可能性が高いでしょう。

また、遺産分割の協議は複雑であり、特に不仲な相続人同士の合意形成は難しい場合があります。

そのため、遺産の評価や分配方法に対する意見の不一致が、感情的な対立を引き起こすことがあるでしょう。

さらに、遺産には家族の歴史や感情が詰まっていることもあるため、不仲な相続人同士の間でその価値観が対立する可能性があります。

これにより、物品や資産に関する争いが発生し、協議が行き詰まることが多くあります。

また、相続人たちが法的な知識に乏しい場合、遺産分割のプロセスやルールを正しく理解できず、混乱や不正確な判断が生じることも考えられます。

こうした相続トラブルを未然に防ぐためには、専門家の助言を受けることが重要です。

弁護士や税理士などの専門家は、法的な知識や遺産分割のプロセスについてアドバイスを提供することで、公平な合意形成を支援します。

さらに、感情的な対立を緩和するためには、中立的な第三者の関与を検討することも有効です。

透明性を保ちつつ全員が納得できる解決策を見つけるためには、遺産分割協議の過程を十分に検討し、適切なサポートを受ける必要があります。

遺産のほとんどが不動産のケース

遺産トラブルは、特に遺産の大部分が家屋や土地などの不動産で構成されている場合に発生しやすくなります。

このような状況では、複数の相続人が家の所有権や価値について合意に達することが難しい場合があります。

遺産の不動産には、感情的な結びつきや思い出が深く関わっていることが多く、それが対立を引き起こす一因となることがあります。

遺産の不動産を公平に分割する方法は、以下のような手順を考えることが重要です。

• 評価の明確化：遺産の不動産の正確な評価をおこなう必要があります。これには不動産鑑定士の専門知識が必要であり、公正な評価額を求めるためには専門家の協力を得ることが重要です。
• 分割方法の検討：不動産の分割方法については、いくつかの選択肢が考えられます。相続人が共同で所有する、売却してその収益を分割する、特定の相続人が取得するなどの方法があります。各相続人の意向やニーズに合わせて、最適な方法を検討することが重要です。
• 相続人間の合意形成：不動産の所有権を公平に分割するためには、相続人間での合意形成が不可欠です。これには相続人間のコミュニケーションと協力が必要であり、専門家の助言を得ながら適切な解決策を見つけなければなりません。

遺産の不動産が関わる相続トラブルを回避するためには、感情的な対立を避けつつ、公平で合意の取れる方法を見つけるために専門家の助言や中立的な第三者の関与を活用することが重要です。

特定の相続人が介護していたケース

特定の相続人が介護を担当していたケースは、相続トラブルが生じやすい事例のひとつといえます。

このような状況では、以下の要因がトラブルの原因となることがあるでしょう。

まず、介護をおこなっていた相続人がほかの相続人に比べて遺産分配において特別な寄与分を主張することがあります。

介護には時間や労力、経済的な負担がかかるため、これに対する報酬や償いを求めるためです。

一方で、ほかの相続人はその寄与の大きさや必要性に異なる見解を持つ場合もあり、合意形成が難しくなることがあります。

寄与分の考え方は法律や地域によって異なりますが、一般的には介護に費やした労力や負担を考慮し、公平な方法で分配をおこなうことが求められるでしょう。

この際、具体的な証拠や記録が寄与分の主張を裏付ける重要な要素となります。

しかし、感情的な要素や相続人間の不一致が介護に関する寄与分の評価を難しくすることがあります。

介護を担当していた相続人とほかの相続人間の関係が複雑である場合、遺産分配において感情的な対立が生じることもあります。

介護をしていない相続人から見て、寄与分の評価が不公平であると感じる可能性があるため、遺産分割協議が難航することがあるのです。

こうした問題を未然に防ぐためには、遺産分配の際に寄与分の考慮を透明性を持つ必要があります。

専門家の助言や中立的な第三者の関与を通じて、遺産分割が公正で合意のある形で進むよう努力することが求められるでしょう。

生前に高額の贈与があったケース

特定の相続トラブルが発展しやすいケースのひとつに、生前に高額な贈与がおこなわれた事例があります。

生前贈与は、遺産分割に影響を与える要因となることがあり、以下の点がトラブルの原因となることが考えられるでしょう。

まず、生前に高額な贈与を受けた相続人が、その贈与分を遺産分配において特別扱いすることを主張することがあります。

他方で、その他の相続人はその生前贈与を含めたうえで遺産分割をおこなうべきと主張する可能性があります。

生前贈与が関わる相続トラブルを避けるためには、生前贈与について持ち戻しをするか否か意思表示をしておくことが有益な場合もあります。

不公平な遺言書が遺されていたケース

特定の相続トラブルが発展しやすい状況として、不公平な遺言書が存在するケースが挙げられます。

遺言書は遺産分配に影響を与える要因となり、以下の理由からトラブルが生じることがあるでしょう。

不公平な遺言書が存在する場合、特定の相続人に不当に多くの財産や資産が割り当てられている可能性があります。

これに対し、他の相続人は不平等な分配に対して不満を抱くことが考えられ、公平な遺産分配のために紛争が生じる可能性が高まるでしょう。

このようなケースにおいては、法的に認められる範囲内での遺留分の概念が重要です。

遺留分は、遺産を相続する者が法律上受ける権利であり、遺言書によってその権利を侵害されることは避けなければなりません。

不公平な遺言書によって遺留分が損なわれた場合、相続人はその遺留分を主張する権利を持ち、遺産分配における公平性を保つために法的手続きをおこなえます。

遺留分の主張には、遺言書の内容や法的規定に基づいておこなわれるため、専門的な法的アドバイスが不可欠です。

遺留分の計算や主張の根拠を正確に評価するために、弁護士や専門家の協力を得るとよいでしょう。

遺産の使い込みが疑われるケース

特定の相続トラブルが発展しやすい事例に、遺産の使い込みが疑われるケースがあります。

このような状況では、以下の要因がトラブルの原因となる可能性があるでしょう。

まず、相続財産の調査が不十分なまま遺産が使用されると、相続人間で遺産の使い道や運用方法について異なる意見が生まれ、不信感や疑念が高まる可能性があります。

特に、誰がどの程度の財産を使用したかという証拠が不明確な場合、対立の火種となる可能性が高いでしょう。

このようなトラブルを未然に防ぐためにも、以下の手順で進める必要があります。

1. 相続財産の調査：遺産の調査は遺産分配の基盤となる重要なステップです。遺産の資産や負債を正確に評価し、記録を残す必要があります。
2. 透明性の確保：遺産の使用や運用に関する情報は、全ての相続人に対して平等に提供されるべきです。公平で合意のある方法で遺産を使用するためには、透明性が欠かせません。
3. 証拠の収集：遺産の使い込みが疑われる場合、証拠を収集することが重要です。領収書や明細書などの文書を保管し、遺産の使用状況を裏付けられるようにしておきましょう。
4. 専門家の協力：遺産の調査や証拠の収集には、弁護士や会計士などの専門家の助言を得ることが有益です。専門家は法的なアドバイスや適切な手続きの案内を提供してくれます。

相続財産の適切な調査と透明性の確保を通じて、遺産の使い込みに関する疑念やトラブルを未然に防ぐことが大切です。

遺産分配が公正で合意のある形でおこなわれるよう、適切な対策を講じることが求められます。

被相続人に愛人や隠し子がいたケース

特定の相続トラブルが発展しやすいケースとして、被相続人に愛人や隠し子がいたケースが挙げられます。

このような状況では、相続人としての立場や法的地位に関わる複雑な要因がトラブルの発端となることがあるでしょう。

相続人は、被相続人の遺産を受け継ぐ者のことを指します。

通常、直系相続人（配偶者や子供）や法定相続人（親族など）がこれに該当しますが、愛人や隠し子も法的な手続きや条件を満たす場合には相続人として認められることがあります。

このような状況での相続トラブルを回避するためには、まず被相続人の関係者に対して、愛人や隠し子の存在について透明かつ適切な情報提供をおこなうことが大切です。

法的な手続きや規定に従い、愛人や隠し子の法的地位を認識し、遺産分配における適切な方法を模索することが求められます。

また、専門家の助言を受けながら、法的な手続きや遺産分配の方法を検討することも重要です。

相続トラブルを解決するための手段

相続に関わるトラブルは感情的な要因や法的な複雑さから発生しやすく、その解決は慎重なアプローチが求められます。

以下では、相続トラブルを解決するための方法を探ってみましょう。

相続問題が得意な弁護士に依頼する

相続に関する問題は専門知識と経験が必要です。

相続問題が得意な弁護士に相談することで、依頼者の権利や法的な手続きについて明確なアドバイスを得られます。

弁護士は遺産分割や遺言書の有効性など、法的な側面に精通しており、トラブルの解決に向けて効果的なアクションプランを提案してくれるでしょう。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

家庭裁判所には遺産分割調停の制度が存在し、紛争を裁判外で解決する手段として利用できます。

家庭裁判所は中立的な立場から、相続人間の合意形成をサポートし、遺産の分配を円滑に進めるための架け橋となるでしょう。

遺産分割調停は法的手続きを簡素化し、長期化する裁判を回避するための有効な手段として検討されます。

【参考】遺産分割調停 | 裁判所

裁判外紛争解決手続（ADR）を利用する

裁判外紛争解決手続（ADR）は、争いごとを裁判所外で解決する手法の総称です。

仲裁や調停、協議などが含まれ、個々のケースに応じて最適な方法が選ばれます。

ADRは時間やコストを削減し、より円満な解決を目指すことができる手段です。

特に感情的な問題が絡む相続トラブルにおいて、相互の合意を尊重しながら解決を図る道として検討されます。

相続問題の解決は、遺産の分配だけでなく家族関係や感情にも影響を及ぼす重要な過程です。

適切な方法を選び、専門家のアドバイスを受けながら解決策を探求することで、円滑に遺産分配をしていけるでしょう。

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遺産相続トラブルについて弁護士と相談できる窓口

遺産相続にまつわるトラブルは、財産の分配や遺言書の解釈など、複雑な要素がからみ合います。

こうした問題に対処する際には、経験豊富な弁護士のアドバイスを受けることが、円滑な解決への近道となります。

以下では、遺産相続トラブルに関する弁護士と相談できる窓口について詳しく紹介します。

ベンナビ相続｜相続トラブルが得意な弁護士を探せる

ベンナビ相続は、遺産相続に関する問題に特化した情報提供サイトです。

お住まいの地域や予算に合わせて、条件を絞って検索できます。

手間をかけず期限内に手続きを進めるためにも、ぜひ「ベンナビ相続」を活用してみてください。

こちらでは、相続トラブルに精通した弁護士のプロフィールや経歴を掲載しており、適切な専門家を見つける手助けをしています。

専門的な知識をもつ弁護士に相談することで、状況や要望に合った遺産相続問題の解決策を提案してもらうことができます。

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法テラス｜資力基準などを満たせば無料で相談できる

法テラスは、経済的な条件を満たす人々に対して、無料で法的相談を提供する制度です。

遺産相続トラブルに悩んでいる場合でも、一定の条件を満たせば法テラスを利用して専門の弁護士と面談することが可能となります。

経済的な負担を抑えつつ、遺産相続に関する専門的なアドバイスを受けられるでしょう。

【参考】無料の法律相談を受けたい｜法テラス

弁護士会｜遺言・相続センターなどで相談を受け付けている

地域の弁護士会は、遺言や相続に関するセンターを運営しており、遺産相続に関する相談を受け付けています。

弁護士会の遺言・相続センターでは、専門の弁護士が遺産分割や遺言書作成などの問題についてアドバイスを提供しています。

無料または低コストで相談ができる場合もあり、専門家のアドバイスを手軽に受けることができます。

【参考】遺言・相続に関する弁護士会の法律相談窓口｜日本弁護士連合会

【被相続人向け】遺産相続トラブルの予防方法

遺産相続は、家族間での感情や利害が絡むデリケートな問題です。

遺産相続トラブルは、被相続人の意思が不明確だったり、相続人間でのコミュニケーションが不足していたりすることが原因で起こります。

そこで、被相続人としては、自分の死後に遺産相続トラブルが起こらないように予防策を講じておくことが大切です。

以下では、遺産相続トラブルの予防方法について具体的に紹介します。

遺言書（公正証書遺言）を作成しておく

遺言書は、被相続人の遺産分割の意思を明確にする文書です。

遺言書は自筆証書や秘密証書などさまざまな形式がありますが、最も安全で確実なのは公正証書遺言です。

公正証書遺言は、公証人によって作成される正式な文書で、法的効力が高く、紛失や改ざんのリスクも低いでしょう。

遺言執行者を弁護士に依頼するのもおすすめ

公正証書遺言を作成する際には、遺言執行者を指定できます。

遺言執行者とは、被相続人の死後に遺言書に従って遺産分割を実行する人のことです。

遺言執行者は、相続人の一人でも構いませんが、中立的な立場が求められます。

そのため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することがおすすめです。

弁護士などの専門家に依頼すれば、遺言執行の手続きや交渉をスムーズに進めることができ、相続人間のトラブルを防ぐことも期待できます。

家族信託や後見制度を利用する

遺産相続に関わるトラブルを未然に防ぐためには、家族信託や後見制度の活用を検討することも考えられます。

家族信託は、遺産を信託として託すことで、相続人間の対立や紛争を軽減する手段となります。

信託のルールや条件をあらかじめ定めることで、遺産分配に関するトラブルを予防できます。

また、後見制度は、認知症などで自己判断能力が低下した際に、法定代理人を設定する制度です。

自身の意思を尊重しながらも、トラブルを回避する一助となるでしょう。

自身の財産管理を十分おこなう

遺産相続トラブルを避けるためには、ご自身の財産管理を適切におこなうことが重要です。

遺言書を作成し、遺産の分配方法や相続人を明確にすることで、後々のトラブルを防げます。

また、遺産に関する文書や資産の詳細な記録を整理・保管しておくことも大切です。

遺産の行方を明確にすることで、相続人間の誤解や不信感を回避し、円満な相続手続きを進められます。

さいごに｜遺産相続トラブルはできる限り早めに弁護士に相談を！

遺産相続トラブルは感情的な要素や法的な複雑さから発生しやすく、未然に予防することが大切です。

しかし、専門的な知識がないとどのようなことをしていくべきかわからないものでしょう。

そのため、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

専門家の助言を得ることで、トラブルを早期に解決し、円滑な遺産相続を実現する道を切り開くことができるでしょう。

遺産相続に関するトラブルを回避し、大切な遺産の適切な分配を実現するためにも、本記事を参考に行動に移してみてください。

円満な遺産相続の実現に向けて、専門家のアドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。

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