意見照会書が届いたらどうする?発信者情報開示請求の対応ガイド | ベンナビ弁護士保険  
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意見照会書が届いたらどうする?発信者情報開示請求の対応ガイド

ある日突然、プロバイダから発信者情報開示請求の意見照会書が届き、驚いている方もいるでしょう。

発信者情報開示請求の意見照会書は、請求者に対して発信者(あなた)の氏名や住所などの個人情報を開示してよいか意見を求めるための書類です。

この書類が届いたということは、あなたがインターネットに書き込んだ内容によって、請求者が「被害を受けた」と主張していると考えられます。

意見照会書の回答を拒否したり、無視したりしてもペナルティを科せられるわけではありません。

しかし、請求者が情報開示を求める裁判を起こし、裁判で主張が認められれば裁判所は開示を命じますし、損害賠償請求をされれば拒否したり無視したりしたことが賠償金の金額に影響する可能性も否定できません。

場合によっては、告訴されて刑事事件となるケースもあります。

あなたにとってより不利な状況にならないようにするため、発信者情報開示請求の意見照会書が届いたら適切に対応する必要があるのです。

本記事では、発信者情報開示請求の意見照会書が届いた理由のほか、届いた際の対処法、返答後の対応などについて紹介します。

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この記事を監修した弁護士
荒生 祐樹  弁護士 ( さいたまシティ法律事務所)
立命館大学法科大学院 卒業。新聞、テレビ番組などメディアへの出演経験をもち、数々の著書も執筆にも携わる。

発信者情報開示請求の意見照会書が届いた理由

発信者情報開示請求の意見照会書が届いたということは、まず、あなたがインターネットに書き込んだ内容によって「被害を受けた」と考える方(請求者)がいるということです。

そのうえで、請求者があなたの情報を開示するようプロバイダに求めている場合に、プロバイダがあなたに開示の可否を確認する目的で発信者情報開示請求の意見照会書が送付されます。

請求者はあなたの情報が開示されたあと、以下をおこなう目的があると考えられます。

【請求者の目的】

  • あなたに該当の投稿を削除するよう請求する
  • 該当の投稿をおこなったあなたに対する損害賠償請求
  • あなたに対する刑事告訴

発信者情報開示請求の意見照会書のサンプル

電気通信事業者協会を含む4団体によって運営されている「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」では、照会書の書式として以下のようなサンプルを掲載しています。

プロバイダによって多少異なるかもしれませんが、概ねこのような意見照会書が届いていることでしょう。

引用元:プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会「発信者情報開示関係書式」

発信者情報開示請求の意見照会書が届いた場合の対応方法

プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いた場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。

仮に意見照会書を無視した場合、プロバイダは「あなたの意見がない」としてプロバイダの判断だけで開示するか否かを決定します。

そのため、あなたの情報を開示されたくない場合は、無視するのは得策ではありません。

相手からの開示請求に「同意する」か「同意しない」旨の回答をすることが推奨されます。

以下、ケースごとに適切な対応方法をみていきましょう。

権利侵害に心当たりがない場合|同意しない

発信者情報開示請求の意見照会書に記載された投稿をした覚えがないのであれば、情報開示に「同意しない」として回答しましょう。

ただしプロバイダは投稿がおこなわれた発信元IPアドレスから投稿者を特定していますので、あなたが投稿内容に心当たりがないという可能性は低いです。(あなたのパソコンやスマートフォンを家族や同居人などが使って、該当の投稿をした可能性はあります。心当たりがあるのであれば、家族や同居人に確認しましょう。)

請求内容に納得がいかない場合|同意しない

「正直な感想を口コミとして書いただけで名誉毀損ではない」など、照会書にある権利侵害の理由に納得できない場合も「同意しない」と回答します。

開示請求に応じて示談したい場合|同意する

権利侵害をしたことに反論の余地がなければ、同意して、示談交渉に応じるのが賢明でしょう。

明白な理由もなく「同意しない」と回答してしまえば、反省の色が見えないとして、慰謝料を増額して請求されるおそれもあります。

素直に自分の非を認めて謝罪すれば、早期解決できる可能性が高まります。

開示請求に「同意しない」ときの回答内容のポイント

発信者情報の開示に応じたくないなら、「同意しない」と回答するだけでなく、その主張を裏付ける理由も示さねばなりません。

「同意しない」と回答する際のポイントを紹介します。

権利侵害をしていないことを主張する

権利侵害をしていないことを認めてもらうためには、ポイントを押さえて主張する必要があります。

主な権利とそれぞれのポイントは以下のとおりです。

権利

ポイント

名誉権(名誉毀損)

投稿内容が名誉毀損にあたるか否かが問われます。投稿内容に「違法性阻却事由(公共性・公益目的・真実性)」がある場合は、名誉権侵害が認められません。ほとんどの場合「投稿内容に真実性があるか否か」が決め手となります。投稿内容が真実であるという根拠を記載しましょう。

名誉感情(侮辱)

投稿内容が相手を侮辱するものか否かが問われます。投稿内容が真実であるかどうかより、投稿内容が社会的に許されない酷い内容か否かが重要です。侮辱にあたるかは、投稿内容や投稿の経緯、前後の文脈も含めて判断されます。投稿内容と投稿に至る経緯を含め、侮辱に当たらないと主張することが必要です。

プライバシー

この場合のプライバシーとは、他人に知られたくない私生活上の情報全般です。投稿内容にプライバシーは含まれないか、公開されない法的利益(法によって守られる個人の利益)を超え公開すべき事情があることを主張します。なお、それがすでに公開されている事実だったとしても、プライバシーの侵害とみなされないわけでない点は注意ください。(例:すでに週刊誌などで公開された内容でも、読者層が異なるサイトなどで公開した場合など)

著作権

投稿内容が著作権の侵害にあたるかどうかが問われます。対象のコンテンツに著作権が認められないか、投稿内容が著作権法の範囲内である旨を主張することが必要です。

肖像権

肖像権を侵害する内容か否かが問われます。たとえば被写体の許可をとっていたり、被写体を特定できなかったり(モザイク加工しているなど)する場合は、肖像権の侵害が成立しづらいです。また撮影場所が被写体の私的な領域(自宅・ホテルの個室など)でなく、公共の場所である場合も、肖像権を侵害したとみなされづらくなります。

正当な理由がないことを主張する

発信者情報の開示を受ける正当な理由がなく、さらし行為など、発信者の生活を害することが目的であると予想されるような場合はその旨を記載しておきましょう。

過去の裁判例でも、発信者情報を用いて、発信者の名誉を不当に傷つけたり、平穏な生活を妨げたりする意図があると認められる場合は、開示を受けるべき正当な理由はないとして、開示請求を却下しています

発信者情報開示請求の意見照会書に返答したあとの対応

意見照会書の返信後に請求者がどのような行動をするかは、返信内容によって異なります。

開示請求に同意しないと回答した場合、同意すると回答した場合、それぞれの場合に予想される請求者の対応と、請求された側の対処法をみていきましょう。

同意しない場合|請求者が訴訟などを提起する

照会書で同意しない旨を返信し、プロバイダがあなたの意見を踏まえ開示を拒否した場合、請求者は裁判手続きを利用して発信者情報の開示を求めるでしょう。

裁判所が請求を認めれば、発信者(あなた)の同意の有無にかかわらず、発信者情報が開示されます。

なお、これらの裁判手続きは、発信者情報を保有するプロバイダを相手として提起されるため、この時点で発信者自身にできることはありません。

ただし、発信者情報の開示後に請求者からおこなわれる可能性の高い損害賠償請求や刑事告訴に備えるためにも、意見照会書が届いた段階で弁護士に相談しておくほうがよいでしょう。

同意する場合|請求者と示談交渉をおこなう

開示請求書で同意する旨を回答しプロバイダも開示に応じた場合、やがて請求者側から連絡が届き、示談交渉をおこなうことになるでしょう。

示談交渉では、あなたが書き込んだ内容の削除や、権利侵害に対する慰謝料などが請求される可能性があります。

ここで気をつけたいのは、相手の請求内容は適当か、ということです。

確かに権利侵害をしたあなたに非はありますが、無理な要求まで呑む必要はありません。

特に、慰謝料額の算出方法には法的な定めがないため、不当に高い金額を請求される可能性もあります。

慰謝料額は、投稿の内容,拡散の程度,被害者及び発信者の属性等を踏まえ,過去の裁判例を参考にして決めるのが一般的であり、目安となる金額は下記のとおりです。

相場よりも大幅に高い額を請求されている場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。

慰謝料を減額でき、無理のない条件で解決できる可能性が高まります。

【権利侵害別の慰謝料の相場・目安額】※あくまで一例です

権利侵害の種類

慰謝料の相場・目安額

名誉毀損

個人に対する場合は10万~50万、企業に対する場合は50万~100万円程度

侮辱

1万~10万円程度

※特に悪質である場合や被害の程度によっては10万円以上の慰謝料が認められることもある

プライバシー侵害

10万~50万円程度

著作権侵害

権利侵害を受けなければ販売できた数×利益の額

肖像権侵害

10万~50万円程度

発信者情報開示請求の意見照会書が届いた際に弁護士に依頼するメリット

発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いたら、早めに弁護士に依頼をするのがおすすめです。

弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットを受けられるためです。

1.請求内容の確認や意見照会書の作成を任せることができる

弁護士に依頼すれば、書き込みの内容が権利侵害に該当するかの判断や、該当しない旨を主張する効果的な意見照会書の作成を任せることができます。

特に権利侵害をした覚えがない場合は、法律に照らして論理的に主張することが非常に大切です。

弁護士が的確に主張をし、請求者の主張をさけることができれば情報開示を避けられる可能性が高まります。

請求者が反論の余地を見いだせず、裁判手続きを断念する場合もあるでしょう。

2.加害者との示談交渉や裁判手続きの負担が減る

依頼後は、代理人である弁護士が示談交渉や裁判手続きなど、全ておこないます。

依頼者は、弁護士から報告を受けたり、適宜打ち合わせをおこなったりするだけなので、解決のための労力や時間の負担を大幅に減らせるでしょう。

相手方と直接関わらなくて済むため、精神的な負担も軽減されます。

3.刑事事件化を避けられる可能性がある

請求者は、損害賠償だけでなく、刑事告訴をして加害者の処罰を望む可能性もあります。

弁護士に依頼することによって、示談交渉をもって全てを解決してもらう、告訴後であっても取り下げてもらえるよう交渉してもらうこともできます。

刑事事件となる可能性が低くなり、早期解決となる可能性があるでしょう。

加害者側の発信者情報開示請求の対応を弁護士に依頼する場合の費用目安

弁護士に依頼する場合にかかる、弁護士費用の目安は以下のとおりです。

費用項目

費用目安

相談料

30分あたり5,000円程度(初回)

着手金

20万円程度~30万円程度

報酬金

20万円程度~30万円程度

ほかに、実費(収入印紙代・交通費など)や日当(事務所以外に出向いて弁護士活動をおこなった場合の費用)などが発生します。

弁護士費用は、法律事務所によって規定が異なるため、より具体的な費用を知りたい場合は、法律相談を利用した際に、見積もりをもらうようにしましょう。

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発信者情報開示請求をされたときのよくある質問

発信者情報開示請求をされた場合の対処法を紹介してきましたが、ほかにもわからないことがあるという方もいるでしょう。

意見照会書が届いた際の、よくある質問とその回答を紹介します。

Q.意見照会書への回答は無視してもいいのか?

同意であれ不同意であれ、必ず回答をするべきです。

回答がなかった場合の対処は、プロバイダによって異なりますが、「開示について、発信者は異議がない」と判断され、開示される可能性が高くなるからです。

また、権利侵害があった場合には、一般的に示談交渉や訴訟において和解を目指すものですが、無視すれば被害者の心証が悪化し、発信者にとって不利となる可能性もあります。

回答内容にかかわらず、無視はしないのが賢明です。

Q.意見照会書への回答はいつまでにおこなうのか?

発送元のプロバイダにより異なる可能性があるので、照会書に記載された期限に従ってください。

照会書受領日から2週間以内とされるのが一般的です。

さいごに|発信者情報開示請求をされたら早めに弁護士に相談を!

プロバイダから発信者情報開示請求についての意見照会書が届いたら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

不用意に自分で回答することで、不利になったり、損をしたりする可能性もあるからです。

慰謝料の減額や支払いの回避を見込めた場合でも、適切に回答できなかったために、相手の請求どおりに対応するしかなくなったり、刑事告訴されたりする可能性があります。

そのような事態に陥らないためにも、早めに弁護士に相談し、適切に対処するようにしましょう。

ぜひベンナビITで、ネットトラブルの解決を得意とする弁護士を見つけ、相談してください。

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