日照権とは?実際の判例からみる判断基準と主張するために取るべき行動

日照権とは?

住宅購入にあたって多くの人が重視するのが『日当たり』です。

太陽の光がしっかりと届くことは、室内を明るく清潔に保つことにつながると同時に、住んでいる人の心身の健康にもよい影響を与えます。

だからこそ、住宅への日当たりは『日照権』によって保護されており、日照権侵害は裁判にも発展する重大な問題なのです。

日照権とはどのような権利なのか。日照権をめぐるトラブルや裁判における判断の事例、日照権を侵害された場合にとるべき行動、さらには裁判にかかる弁護士費用などを解説します。

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自分の家を保護する権利、日照権とは?

『日照権』とは、住宅などの建築物への日当たりを確保する権利をいいます。

日本国憲法第13条に定める幸福追求権を根拠として盛んになった権利のひとつで、1970年代から注目されるようになりました。

ただし、憲法をはじめ、何かの法律に明記されているわけではなく、関係する法律の規制によって保護を受ける形にとどまっています。

建築基準法の日照権

日照権を保護するための規制を設けているのが「建築基準法」です。

建築基準法には「斜線制限(しゃせんせいげん)」と「日影規制(にちえいきせい・ひかげきせい)」という2つの規制が存在します。

斜線制限

斜線制限とは、土地に対して建築物を建てることができる空間の範囲を規制するもので、次の3つに分けられます。

  • ✓道路斜線制限
  • ✓隣地斜線制限
  • ✓北側斜線制限

それぞれの制限を受ける用途地域や特徴は次のとおりです。

制限の種類 対象となる用途地域 特徴
道路斜線制限 道路に接するすべての建築物 ✓道路の反対側の建物の日照を保護する
✓道路幅員の影響を受ける
隣地斜線制限 第一種・第二種低層住居専用地域を除く地域 ✓隣地に面した建物の高さが20mまたは31mを超える場合の制限で、高層ビルやマンションに適用される
北側斜線制限 住居専用地域 ✓北側隣地の日照を保護する
✓北側隣地との境界線上に5mまたは10mの高さを設けて斜線を引くことで建築可能な範囲を制限する

このなかで日照権に関係するのは北側斜線制限です。

北側斜線制限

【引用元】あなたの弁護士

この図のように、北側の隣地境界線に5mまたは10mの高さを設けて、さらに「横1:縦1.25」の勾配で斜線を引くことで、建築物を建てることができる範囲が決まります。

隣地境界線に設ける高さが5mとなるのは第一種・第二種低層住居専用地域で、10mとなるのは第一種・第二種中高層住居専用地域です。

日影規制

日影規制とは、1年のなかでもっとも日が短い冬至の日の午前8時から午後4時までを基準として、建物によってできる影の大きさを規制するものです。

おもに建築物の高さを規制しており、斜線制限とあわせて周辺への日照を確保する役割を担っています。

用途地域別の日影規制は次のとおりです。

用途地域の種類 日影規制の内容
第一種・第二種低層住居専用地域 ✓軒の高さが7mを超える建物または地下を除く3階以上の建物
商業地域・工業地域・工業専用地域 ✓適用なし
その他の用途地域 ✓軒の高さが10mを超える建物
用途地域の指定がない地域 ✓地方公共団体の規定による

受忍限度の基準

建築基準法の制限・規制を守って建てられた建築物であっても、周辺の日当たりを遮っている場合には、日照権の侵害に該当する場合があります。

ここで重要になってくるのが『受忍限度』という考え方です。

受忍限度とは、他人の生活に悪影響を及ぼす行為や公害について、その影響を受ける人が社会生活において受忍=我慢すべき範囲の限界を指します。

人が社会生活を送る以上は、日当たりの侵害や騒音などが多少なりとも生じるものであり、お互いに合理的な範囲内であれば「受忍限度内である」として、権利侵害を訴えても主張が認められることはありません。

そして、受忍限度を超えているかどうかは、おおむね次のような基準で判断されると考えることができます。

  • ✓日光が遮られている程度
  • ✓どちらが先に住んでいたか
  • ✓どのような環境の地域なのか
  • ✓建築基準法上の制限・規制に違反しているか
  • ✓被害者の生活にどのような悪影響を与えているのか
  • ✓加害者が防止措置をとったか、交渉の経緯や態度に問題はなかったか

受忍限度については、法律による明記がありません。

どのような条件を満たせば受忍限度を超えていると判断されるのか、そこに明確な基準は存在しませんので、それぞれの事案に応じて個別に判断されることとなります。

日照権侵害の判例集

では、実際に日照権侵害を主張して裁判で争った事例をみていきましょう。

日照権の侵害が認められたケース

被告による日照権の侵害が認められた事例としては、次の判例が参考になります。

【東京高裁 昭和43(オ)32 損害賠償請求】

被告側が二階部分を増築したことによって、隣接する原告側の住宅の日照・通風が遮られたことを裁判所が認定し、被告に対して損害賠償を命じた事例です。

増築した二階部分が原告の住宅と庭への日照を著しく遮り、季節によって若干の変化はあるものの、朝夕のわずかな時間帯を除いては、日中でもほとんど日光が差さない状態となりました。

しかも、被告側の増築工事は建築基準法に違反しており、自治体からの工事停止命令や違反建築物の除却命令を受けていたにもかかわらずこれを無視していたという事情もあったため、社会観念上、妥当な権利行使としての範囲を逸脱していると認定されました。

【引用元】最高裁判所判例集|裁判所

この判例のポイントは、日光が遮断された程度が著しかったことに加えて、被告側の増築工事に建築基準法違反があり、しかも自治体からの命令も無視して工事を断行した結果によって生じた被害だったという点でしょう。

単に日照を遮っただけではただちに違法とはならなくても、受忍限度を超える程度の侵害行為であり、加害者の対応が社会生活を送るうえで合理的な範囲ではないといった点が大きく影響した判決です。

日照権の侵害が認められなかったケース

続いて、被告による日照権の侵害が認められなかったケースも確認していきましょう。

【福岡地裁 平成30(ワ)358 損害賠償請求事件】

隣接する土地に被告側の住宅が建ったことで、原告側の住宅に設置していた太陽光発電システムの稼働率が低下したため、原告が損害賠償を請求した事例です。

発電量は年平均45.5%、売電量も年平均45%が低下したため、被告に対しておよそ1,200万円の損害賠償を求めましたが、裁判所は原告の主張を認めませんでした。

原告側が太陽発電システムを設置した高さが2.5mという低い場所だったこと、被告側に建築基準法などの違反がなかったことなどが判断の理由となりました。

【引用元】下級裁裁判所裁判例速報|裁判所

日当たりが遮られた事実があり、太陽光発電システムの稼働率が低下したという不利益が生じたとしても、日照権侵害が必ず認められるわけではないという一例です。

この判例では、日当たりが遮られたという事実よりも、被告建物の建築に違法性がなかったことや、そもそも低い位置に太陽光発電システムを設置していたという事情のほうが重視されています。

また、本件の太陽光発電システムによって発電された電気は住宅地の共用部分へと供給されていましたが、発電量が減少しても共用設備の運転には大きな支障がでていなかった、という点も指摘されました。

日当たりが遮られても、住民の生活や設備などの運転に大きな支障がでない限り、裁判所としては日照権の侵害を認めにくいものと考えられます。

これって日照権侵害?起こりうる日照権トラブル

日照権は法律による明記がないため、建築基準法や各自治体の定めなどにおける制限・規制をもとに裁判所が慎重に判断します。

日照権侵害に該当するかどうかを判断するのは非常に難しいので、具体的な事例をもとに日照権侵害が成立する可能性を考えていきましょう。

【トラブル例1】日照権を主張してマンション建設を中止させたい

商業用途の地域に建設された新築マンションを購入して居住していたところ、南側に新たに15階建てのマンションが建設されるとの通知を受けた。

建設図面をみたところ、朝から夕方にかけてこちらが日陰になるようであり、日照権を主張して建設中止を訴えたい。

商業地域は延床面積の規制がなく容積率の限度も高いため、居住用のマンションが建設されるケースも増えています。

近隣にさらに高層のマンションが建設されれば日当たりが遮られる可能性もありますが、商業地域では日照権の保護を受けることができないので、日照権侵害を理由にマンション建設差し止めを請求しても認められる可能性は非常に低いといえます。

ただし、自治体などの条例によって建築物の高さが制限されているケースもあり、その場合には条例違反を根拠として建設をストップできる可能性があります。

【トラブル例2】南側に新築住宅が建って日当たりが悪くなった

自宅の南側に、新たに住宅が建つことになった。

日照権があることを工事業者に訴えたが、「敷地境界線から1.5m離れているので違法にはならない」と回答されただけで工事に踏み切られてしまい、実際に工事が終わると2階の一部しか日が当たらない状態になった。

実際に日当たりが悪くなったので、日照権侵害を主張して損害賠償を求めたい。

たしかに日照権は「住宅などの日当たりを確保する権利」ですが、日当たりが悪くなったらただちに日照権の侵害が成立するとまではいえません。

とくに、相手方の建築物が建築基準法の制限・規制の範囲内で建てられている場合には、日照権の侵害が認められるケースは非常に少ないと考えられます。

なお、用途地域なども複雑に関係することから、いきなり裁判に訴えるのではなく、まずは調停を申し立てて、相手方と話し合いをはじめることをおすすめします。

【トラブル例3】隣家を解体して以前よりも大きな住宅が新築されることになった

隣家を解体し新築することになり、施主と業者から説明を受けたが「以前よりも少し大きな住宅を建てるので、1mほど距離が近くなる」と聞かされた。

このまま建築が進めば自宅の1階部分と庭がほとんど日陰になってしまうので、住宅の大きさや建築する位置などを以前のとおりに収めてもらうよう求めたい。

建築基準法に違反しない限りは、日照権を主張しても建築の差し止めや工事内容の変更を求めることは難しいでしょう。

それでも、「高さを低くしてほしい」「こちらとの距離を離して建築してほしい」といった要求を伝えたい場合には、まずは調停を申し立てて、相手方と話し合うことが望ましいといえます。

調停で話し合いを行うにあたっては、このまま建築が進んで隣家が完成した場合に、どのような日照権侵害が起きるのかを、具体的に示す必要があります。

建築士などに依頼して日照図を作成するなどの準備が必要になってきます。

日照権を正当に主張するためにやるべきこと

ここまで見てきたとおり、日照権についての主張は簡単に認められるものではありません。

とはいえ、これまでずっと続いてきた良好な日当たりを遮られる可能性がある場合には、何もせずに泣き寝入りするのではなく、日照権を主張するためのアクションを起こすべきです。

日照権を正当に主張するためにやるべきことを確認しましょう。

日照権を侵害されている人たちと連携する

ひとりの個人が訴えるよりも、多くの住民が日照権侵害を受けていると主張する方が、理解を得られやすいといえます。

まずは周辺住民などと協力し、日照権侵害を受けている被害者がいないかを確認します。

施主もしくは工事責任者と話し合いをする

隣地に住宅やマンションなどが新築される予定を知ったときには、施主となる土地の所有者や工事の責任者を交えた話し合いの場を設けることも大切になってきます。

周辺の日照権に配慮して工事を進めることを認めてもらえば、施工完了後に日照権侵害が起きるリスクを回避できる可能性があります。

話し合いが進まない場合は行政に相談する

施主や工事責任者との話し合いで解決できない場合には、各都道府県の建築指導課に相談して建築紛争調整による支援を受けることができます。

行政からの指導を受けるということになれば、工事業者が改善に応じる可能性が出てきます。

弁護士に相談する

弁護士に相談すれば、日照権侵害の主張は可能か、損害賠償請求が認められるのかといった疑問について明確なアドバイスを受けることができます。

調停や訴訟といった裁判所の手続きを利用する際には、代理人として弁護士に一任することも可能です。

建築工事続行禁止の仮処分を求める

交渉や調停・裁判といった方法で争っている間も、日照権を侵害するおそれのある建物の建築は進みます。

裁判所に建築工事の続行禁止について仮処分を申し立て、それが認められれば、問題が解決するまで建築工事は進みません。

日照権訴訟でかかる弁護士費用と損害賠償金額相場

日照権侵害を裁判で訴えた場合にかかる弁護士費用と損害賠償請求によって認められる相場を確認します。

弁護士費用相場

弁護士にトラブルの解決を依頼した場合は、着手金や報酬金、裁判所に収める手数料や弁護士の交通費といった実費が発生します。

日照権侵害について弁護士に解決を依頼した際の一例は次のとおりです。

  • ✓着手金……20~30万円
  • ✓報酬金……10~20万円

もちろん、すべてのケースがこの範囲で解決できるわけではありません。

難易度が高いトラブルではさらに高額になることがあるほか、弁護士との契約内容によっては、相手から得た解決金の金額に比例して報酬金も高額になる場合があります。

【参考元】市民のための弁護士報酬ガイド|日本弁護士連合会

損害賠償金額相場

日照権侵害に対する損害賠償として認められる金額は、おおむね100万円以下が相場です。

10~30万円程度の賠償しか認められないケースも少なくないので、予め期待を高くしないことが大切です。

それでも、事前の和解条件に反した建物によって日照権が侵害された、多数の住民が日照権侵害を受けているといった場合に高額の賠償額が認められた事例もありますので、まずは弁護士に相談してアドバイスを得ることをおすすめします。

最後に

日照権の問題は、法律によって明文化されていないため解決が容易ではありません。

希望どおりの結果を実現するには、弁護士によるサポートが必要不可欠です。

ただし、弁護士に相談・依頼するには費用がかかります。

日照権の侵害では多額の損害賠償を期待できず、弁護士費用のほうが上回ってしまう『費用倒れ』への不安から、弁護士への依頼を躊躇してしまうケースも少なくないといえます。

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日照権侵害のトラブルについては、1事件につき最大110万円を限度として補償されるので(ただし、一定割合での自己負担は必要となります)、相談が依頼しやすくなるでしょう。

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