インターネット上で住所を晒されたら、速やかに投稿の削除を求めた上で、投稿者に対する損害賠償請求を行いましょう。
投稿者が匿名の場合は、発信者情報開示請求などによって特定できる場合があります。裁判所への申立てを要するケースが多いので、信頼できる弁護士にご依頼ください。
今回は、インターネット上で住所を晒された場合の対処法・手続き・弁護士費用などを解説します。
インターネットで住所を晒された!でも、どう対応すればいいんだろう...と悩んでいませんか?
結論から言うと、削除依頼や開示請求などは自身でおこなうことも可能です。
しかし、迅速で適切に対処したい方は弁護士への相談・依頼をおすすめします。弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。
- スムーズに対処するためのアドバイスを得られる
- 依頼すれば、より迅速な削除対応が見込める
- 依頼すれば、削除対応に必要な手続きを一任できる
- 依頼すれば、専門的な刑事告訴などにも対応してもらえる
ベンナビITでは、発信者情報開示請求を得意とする弁護士をあなたのお住まいの地域から探すことができます。無料相談・電話相談などに対応している弁護士も多いので、まずはお気軽にご相談ください。
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ネットで住所を晒す行為は「プライバシー権侵害」
インターネット上で他人の住所を勝手に晒す行為は、プライバシー権侵害に当たる可能性があります。
「プライバシー権」とは、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利です。憲法上の「幸福追求権」の一環として保障されています(日本国憲法13条後段)。
裁判例上、以下の要件をいずれも満たす事実が後悔されて本人に不快・不安の念を覚えさせた場合、プライバシー権侵害による不法行為が成立すると解されています。
- 私生活上の事実、または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあること
- 一般人の感受性を基準にして、本人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められること
- 一般の人々に未だ知られていないこと
住所は自ら積極的に公開している場合などを除き、上記①~③の要件を満たす事実であると考えられます。そのため、インターネット上で他人の住所を勝手に晒す行為は、プライバシー権侵害に当たる可能性が高いです。
ネットで住所を晒された場合の対処法
インターネット上で勝手に住所を晒された場合には、以下の対処法が考えられます。
- 投稿の削除を求める
- 投稿者に損害賠償を請求する|匿名の場合は「発信者情報開示請求」
投稿の削除を求める
住所を晒す投稿が放置されていると、それが幅広い人の目に触れてしまいます。そのため、一刻も早く投稿の削除を求めることが大切です。
投稿者に損害賠償を請求する|匿名の場合は「発信者情報開示請求」
住所を勝手に晒す行為はプライバシー権侵害に当たり、不法行為に基づく損害賠償の対象となる可能性が高いです(民法709条)。
精神的損害のほか、住所が公開されたことによって嫌がらせの件数が増えた場合などには、実害の損害賠償も認められる可能性があります。
住所を勝手に晒した投稿者が匿名の場合にも、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行えば、投稿者を特定できることがあります。
晒された住所の削除を求める手続き
インターネット上へ勝手に晒された住所の削除を求める手続きとしては、以下の例が挙げられます。
- 投稿者に直接削除を求める
- サイト管理者に削除を申請する
- 裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる
投稿者に直接削除を求める
投稿者のユーザーアカウントなどがわかる場合には、投稿者に対して直接削除を求めることが考えられます。
強固な悪意を持って投稿しているとは限らず、軽い気持ちで投稿してしまっただけかもしれません。
その場合は、住所を勝手に投稿することの違法性を強く訴えれば、任意に投稿を削除する可能性があります。
サイト管理者に削除を申請する
投稿者が削除に応じない場合や、匿名投稿のため投稿者に連絡できない場合には、サイト管理者に削除を申請しましょう。
SNSや匿名掲示板などでは、プライバシー権侵害に当たる投稿に関する削除ポリシーを設けているのが一般的です。
サイト管理者に対して投稿の削除を申請する際には、当該サイトの削除ポリシーに従い、なぜ投稿が削除されるべきなのかを説得的に記載しましょう。
裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる
サイト管理者も削除に応じない場合には、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることを検討すべきです。
問題の投稿によって被害者に著しい損害または急迫の危険が生じる可能性があり、それを避けるために必要と裁判所が認めた場合は、サイト管理者に対して投稿削除の仮処分命令を発します(民事保全法23条2項)。
仮処分命令をもって再度サイト管理者へ削除申請をすれば、大抵の場合は投稿が速やかに削除されます。
住所を晒した投稿者を特定する発信者情報開示請求の手続き
住所を勝手に晒した投稿者が匿名の場合、損害賠償を請求するには投稿者を特定しなければなりません。
匿名投稿者を特定するためには、裁判所に対して発信者情報開示命令などを申し立てる方法がスタンダードになりつつあります。
発信者情報開示命令などの申立て手続きは、以下の流れで進行します。
- 裁判所に対する各種の申立て
- コンテンツ・プロバイダに対する通知
- プロバイダの投稿者に対する意見照会
- 裁判所による当事者の陳述の聴取
- 発信者情報の開示
なお発信者情報がすでに削除されている場合や、投稿に用いられた端末が投稿者本人のものでない場合などには、投稿者の特定に至らない可能性があるので注意が必要です。
裁判所に対する各種の申立て
発信者情報開示命令などの申立先は、原則として相手方の住所または居所がある地を管轄する地方裁判所か(プロバイダ責任制限法10条1項)、または以下の裁判所です(同条3項)。
(a)東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所、札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所が管轄権を有する場合
→東京地方裁判所
(b)大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所、高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所が管轄権を有する場合
→大阪地方裁判所
裁判所に対して行うべき申立ての種類は、以下のとおりです。
①コンテンツ・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て
勝手に住所が投稿されたサイトの管理者に対して、投稿者の情報(=発信者情報)の開示を命ずるよう求めます(プロバイダ責任制限法8条)。
②提供命令の申立て ①に付随して、サイト管理者に対して、アクセス・プロバイダ(インターネット接続業者)の名称等の提供を命ずるよう求めます(同法15条1項1号)。
③アクセス・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て 投稿に用いられた端末のインターネット接続業者に対して、発信者情報の開示を命ずるよう求めます(同法8条)。
④消去禁止命令の申立て 各プロバイダによって投稿のログが削除される可能性がある場合に、ログの消去禁止を命ずるよう求めます(同法16条)。
コンテンツ・プロバイダに対する通知
コンテンツ・プロバイダ(サイト管理者)に対して、アクセス・プロバイダ(インターネット接続業者)を相手方として発信者情報開示命令を申し立てた旨を通知すると、コンテンツ・プロバイダからは投稿に用いられた端末のIPアドレスなどが提供されます(プロバイダ責任制限法15条1項2号)。
IPアドレスなどをアクセス・プロバイダに提供した旨は、コンテンツ・プロバイダからへ裁判所に通知されます。
通知を受けた裁判所は、両プロバイダに対する各申立て(事件)を併合し、一つの手続きで審理します。
プロバイダの投稿者に対する意見照会
プロバイダ(サイト管理者またはインターネット接続業者など)が発信者情報開示命令を受けた場合、連絡ができないなど特別の事情がある場合を除き、発信者情報開示の可否について投稿者本人の意見を聴かなければなりません(プロバイダ責任制限法6条1項)。
投稿者が開示請求に応じるべきでない旨の意見を述べ、その後にプロバイダが発信者情報開示命令を受けた場合、プロバイダは原則としてその旨を投稿者に通知する義務があります(同条2項)。
裁判所による当事者の陳述の聴取
裁判所は、発信者情報開示命令の申立てを不適法または理由がないことが明らかであるとして却下する場合を除き、当事者(申立人・プロバイダ)の陳述を聴かなければなりません(プロバイダ責任制限法11条3項)。
当事者の陳述聴取は、裁判所において開催される期日にて行われます。
発信者情報の開示
裁判所は、以下の要件を満たしていると判断した場合、プロバイダに対して発信者情報開示命令を発します。
①侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかであること
②損害賠償請求権の行使など、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること
※特定発信者情報の場合は、以下のいずれかの事情も必要
・相手方のプロバイダが特定発信者情報しか保有していない
・相手方のプロバイダが保有する特定発信者情報以外の発信者情報が、プロバイダ責任制限法施行規則4条に定めるものに限定されている
・特定発信者情報の開示を受けないと、発信者を特定できない
住所を晒した相手に損害賠償を請求する手続き
インターネット上で勝手に住所を晒した相手に対して、損害賠償を請求する際の手続きとしては、以下の例が挙げられます。
- 示談交渉
- 支払督促
- 訴訟
示談交渉
「示談交渉」は投稿者と直接話し合い、示談金(損害賠償)の支払いについて合意を目指す方法です。
合意が成立すれば、早期かつスムーズに示談金の支払いを受けられるメリットがあります。
支払督促
「支払督促」は、裁判所に金銭の支払いを督促してもらう手続きです。
支払督促は簡易的な書面審査のみで発せられ、債務者(投稿者)が異議を申し立てなければ、強制執行を申し立てることができます。
債務者(投稿者)が異議を申し立てた場合には、自動的に訴訟手続きへ移行します。 参考:支払督促|裁判所
訴訟
「訴訟」は裁判所に対して、投稿者に損害賠償を命ずる判決を求める手続きです。
訴訟を提起した被害者(原告)は、損害賠償請求権の存在を証拠に基づき立証しなければなりません。
専門的な対応が求められるため、弁護士を代理人とするのがおすすめです。
ネットに晒された住所の削除依頼・投稿者の特定などを弁護士に依頼するメリット
インターネット上で勝手に住所を晒された場合、削除依頼・発信者情報開示請求・損害賠償請求などは、弁護士に依頼することをおすすめします。
これらの対応を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下の2点です。
①迅速に住所が削除される可能性がある
弁護士を通じてサイト管理者に連絡することで、住所が無断記載された投稿が迅速に削除される可能性が高まります。
②専門的な裁判手続きを一任できる
投稿削除仮処分の申立て・発信者情報開示請求の申立て・損害賠償請求訴訟の提起など、専門性が高い手続きについても、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえます。
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晒された住所の削除依頼・発信者情報開示請求・損害賠償請求に関する弁護士費用の目安
晒された住所の削除依頼等の対応を弁護士に依頼する際には、以下の弁護士費用がかかります。
①相談料
正式に依頼する前の法律相談について支払います。
②着手金
正式に依頼する段階で支払います。
③報酬金
弁護士の対応によって何らかの成果が得られた場合に支払います。
④日当
弁護士が出張した場合に発生します。
⑤実費
対応の過程で弁護士が支出した実費は、依頼者負担となります。
各弁護士費用の金額目安(実費については具体例)は、以下のとおりです。
※損害賠償請求の弁護士費用については、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にしています。
※インターネット投稿の削除依頼・発信者情報開示請求については、同基準に記載がないため、筆者の私見による参考値を記載しています。
相談料
<共通>
30分5,500円程度 ※弁護士によっては、無料相談を受け付けている場合があります。
着手金
<インターネット投稿の削除依頼に関する着手金額の目安>
任意交渉の場合 |
11万円~33万円 |
仮処分申立ての場合 |
22万円~44万円 |
<発信者情報開示請求に関する着手金額の目安>
22万円~44万円
<損害賠償請求に関する着手金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 |
経済的利益の額の8.8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 |
経済的利益の額の5.5%+9万9,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 |
経済的利益の額の3.3%+75万円9,000円 |
3億円を超える場合 |
経済的利益の額の2.2%+405万9,000円 |
※請求額を経済的利益として計算
報酬金
<インターネット投稿の削除依頼に関する報酬金額の目安>
任意交渉の場合 |
11万円~33万円 |
仮処分申立ての場合 |
22万円~44万円 |
<発信者情報開示請求に関する報酬金額の目安>
22万円~44万円
<損害賠償請求に関する報酬金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 |
経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 |
経済的利益の額の11%+19万8,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 |
経済的利益の額の6.6%+151万円8,000円 |
3億円を超える場合 |
経済的利益の額の4.4%+811万8,000円 |
※獲得額を経済的利益として計算
日当
半日(往復2時間超4時間以内) |
3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) |
5万5,000円以上11万円以下 |
実費
- 郵送費
- 印刷費
- 公的書類の取得費
- 弁護士の交通費
- 裁判手続きの申立費用
- 訴訟費用など
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インターネット上で勝手に住所を晒された場合、投稿の削除依頼・発信者情報開示請求・損害賠償請求などの対応を弁護士に依頼することをおすすめします。
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