パワハラは、受けた人を心身ともに追い詰め、最悪な場合、命を奪うことにもつながる卑劣な行為です。
しかし、上司からのパワハラ行為を会社に訴えても、十分な対応をしてもらえなかったり、対応するどころかパワハラだと訴えた人を辞めさせようとしたりする会社も少なからず存在します。
会社に相談しても解決につながらない場合や、心身の大きな負担となり会社に行くのが辛い状況になった場合は、法に訴えることを検討しましょう。
この記事では、パワハラ被害を訴える方法や流れ、必要な証拠や事例などについてご紹介します。
令和元年、労働局への相談は111万7,983件のうち、民事上の個別労働紛争の相談件数は26万6,535件、そのうちいじめや嫌がらせの件数が8万1,707件にものぼりました。
パワハラの加害者・会社を訴えるには、弁護士のサポートが必要不可欠です。個人で無理に対応すると、証拠不十分で終わってしまうこともあるからです。
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司法試験に合格後、都内の法律事務所勤務を経て日暮里中央法律会計事務所を開業。
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(※本コラムにおける法理論に関する部分のみを監修)
訴える前に知っておきたいパワハラの類型
パワハラには大きく分けて6つの類型があります。自分がパワハラを受けていると感じる場合、どの類型に該当するか確認しておきましょう。
①身体的攻撃
上司から、殴る蹴るなどの暴力をふるわれるなど、身体に危害を与えられる行為が該当します。
物を投げつけられたり、物で叩かれたりといった行為も、直接的に身体に触れてはいませんが「身体的な攻撃」と判断されます。
②精神的攻撃
人格否定をするような発言により、労働者に精神的苦痛を与える行為が該当します
脅し・暴言・侮辱・名誉を棄損する発言などで相手に精神的なダメージを与えることも「精神的な攻撃」となります。
言葉に限らず、メールやLINE等の文面での発言も、こちらに含まれます。
③人間関係からの切り離し
突然、仕事の担当から外され別室への隔離を命じられる、自宅研修をさせられるなどが該当します。
また忘年会や送別会など、社員全員が参加するイベントに呼んでもらえないといったことであっても「人間関係からの切り離し」に入ります。
④過大な要求
本来の業務に直接的な関係がない、肉体的な苦痛を伴う過酷な環境の中での業務を命じるなどの行為が該当します。
明らかに1人ではできないような仕事内容や、長時間労働しなければ終わらないような業務を強いる行為が「過大な要求」です。
⑤過小な要求
気に入らないなどの理由から、能力やこれまでの経験に見合わないような急激に難易度の低い仕事を命じたり、あるいは仕事を与えなかったりといったことが「過小な要求」に該当します。
たとえば自分から退職させるために、本来は営業職であるにもかかわらず倉庫整理しかやらせないなどといったものが、パワハラ行為となります。
⑥個の侵害
「個」とは、個人のプライバシーのことです。プライバシーの侵害に当たる行為が「個の侵害」になります。
有給休暇の申請をしたら誰とどこへ行くのか報告を強要されたり、就業時間外に電話やメールでの連絡を強いられたりすることなどが該当します。
パワハラ被害を訴えるまでの流れ
パワハラ被害にあって訴えるまでの流れの一例は以下のとおりです。
・証拠を集める
・パワハラの事実を会社に報告する
・パワハラ被害を内容証明郵便で会社に送る
・労働審判を申し立てる
・民事訴訟を起こす
順を追って解説します。
証拠を集める
パワハラ被害にあったことを証明するためには証拠が必要となります。
証拠がない状態で仮に訴訟を起こしても、勝訴できる見込みは低くなります。
パワハラを証明するために有効な証拠については、次の章で解説します。
パワハラがあった事実を会社に報告する
会社の内部相談窓口や人事部に、パワハラ被害にあっている事実を報告しましょう。
会社には、従業員に働きやすい環境を保持する義務があります。誠実な会社であれば、しっかりと対応してくれるはずです。
会社が対応してくれない懸念があるときには、報告する際の文書や録音データを残しておきましょう。
パワハラ被害を内容証明郵便で会社に送る
パワハラ被害を会社に相談しても改善が見られない場合は、会社に対して文書で改善要求をしましょう。
その際、内容証明郵便で送付することで、会社に送付した内容を証明することができ、相手が「受け取っていない」と言い逃れするのを防げます。
また、会社に対し、訴訟を起こす際の証拠となります。
労働審判を申し立てる
パワハラの問題を短期間で解決するために、労働審判を検討するのも良いでしょう。
会社との間に裁判所(労働審判員)が入って話し合いをするため、円滑な解決につながる可能性があります。
原則3回以内の期日で審理することとなっています。和解による解決に至る場合も多くあります。和解による解決ができない場合、審判(通常訴訟の判決に当たるもの)が出ますが、異議申し立てがあれば、通常訴訟に移行します。
民事訴訟を起こす
会社への交渉や労働審判でも解決できなければ、民事訴訟を提起します。
訴訟は判決までに長い期間を要することもあり、パワハラで心身ともに疲弊している状態では辛さが増すことが考えられます。
自身の心身の健康のため、また手続きを円滑に進めるためにも、早めに弁護士に依頼することをおすすめします。
「弁護士費用が不安」という方は、いざという時の弁護士費用をサポートしてくれる弁護士保険を活用するのも一つの手です。法的トラブルから身を守るために、一度検討してみると良いでしょう。
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パワハラを証明する有効な証拠とは?
パワハラ問題で訴訟を起こすためには、パワハラを立証するための証拠を集めなければなりません。
ここでは、証拠の種類、また集める方法についても解説します。
録音した音声
暴言など、危害を加えられている証拠として、録音した音声が有効です。
スマートフォンの録音機能を使うことも有効な手段ですが、相手に見つかってしまうかもしれないという恐怖を感じる方もいるでしょう。
そんなときは、小型のICレコーダーやペン型のボイスレコーダーを使うことで、加害者に気づかれる可能性を最小限にして証拠を集めることができます。
比較的安価で長時間の録音ができるものもありますので、まずはボイスレコーダーを用いて、音声データを集めてみるのも良いでしょう。
写真や動画
会社の会議室や移動中の車内など、他に目撃者がいない状況でパワハラを受けることが多いのではないでしょうか。
ケガをした写真など、パワハラの様子を記録しておくことで証拠となります。
録画は相手に気づかれそうで躊躇してしまいますが、光ったり音がなったりしないペン型カメラや腕時計型カメラを使用すれば気づかれる可能性が低くなると考えられます。
メールなどの文章
メールやチャット、現在であればLINEを使って業務連絡する会社も増えているのではないでしょうか。
このような文章を使って、相手を威圧したり理不尽なことを言ってきたりするのも、パワハラ行為に該当します。
印刷したり、個人のメールに転送したり、LINEであればスクリーンショットを残すことで証拠となります。
見るだけで嫌な気持ちになることは想像できますが、泣き寝入りしないためにも破棄などはせず、証拠として残しておきましょう。
医師の診断書
度重なるパワハラにより、精神的ダメージが大きく仕事に支障をきたすようになったら、医師の診療を受けるようにしましょう。
その際、医師にパワハラを受けている事実と自分の症状を詳しく説明し、診断書を出してもらうことをおすすめします。
精神的ダメージが重なると、うつ病等の精神疾患の発症にもつながりかねません。
あまりにも会社に行くのが苦痛であれば、医師の診断を受けたうえで休暇をとること検討してください。
休暇をとりパワハラを回避することで、自身の精神面の回復にもつながりますし、今後の対応について冷静に判断できるようになる可能性が高まります。
部署異動(配転命令)の辞令
上司に意見したことや、そりが合わないなどの理由から、理不尽ととれるような部署移動(配転命令)をされてしまうことがあります。
その際に出された、業務命令や部署異動(配転命令)の辞令なども有力な証拠となります。
文書が手元になければ、写真を撮るなどして保管しておきましょう。
メールなどでがあった場合も、破棄せず証拠として残しておくのが重要です。
日記や業務日報・メモ書き
パワハラ被害にあっていると感じたら、細かい記録や日記をつけるようにしましょう。
- 誰が
- いつ
- どこで
- 何を
- なぜ
- どのようにしたか
という内容を詳細に記入します。
鉛筆だと改ざんできると判断されるので、消えないボールペンなどを使い手書きで残すようにしてください。
時間を置かず、パワハラ被害にあったら、その日のうちに記録しておくのもポイントです。
あまりにも日にちが経っていたり、まとめて記入したりすると、証拠として認められない場合があります。
パワハラの相談先
パワハラ被害にあったときには、一人で悩んでしまうと精神的に追い詰められてしまいます。
早めに相談することで、そのようなことを回避できる可能性があります。
ここでは、パワハラに関する相談先についてご紹介します。
社内の相談窓口や人事部
2022年4月から、大企業だけでなく中小企業にも「ハラスメント相談窓口」の設置が義務付けられました。
パワハラ被害にあったら、まずは社内の相談窓口を利用してみましょう。
または、人事部に相談するという選択肢もあります。
誠実に対応してくれる会社であれば、相談窓口や人事部に相談することで、早期に解決することが期待できます。
ただし会社がきちんとした対応をしてくれなかったり、自身が異動させられたりなど理不尽な対応をされるようであれば、社外に助けを求めましょう。
外部の相談窓口
会社にパワハラの相談をしても対応してもらえない場合や、そもそも相談できる状況でないときには、外部の相談窓口への相談も検討しましょう。
外部の相談窓口とは以下のとおりです。
- 総合労働相談コーナー
- 労働相談センター
- 労働条件相談ほっとライン
- みんなの人権110番
- かいけつサポート
- 法テラス
- こころの耳
一人で思い詰めてしまうと、間違えた判断をしてしまうこともあるため、早めに助けを求めてください。
弁護士などの専門家
法律の専門家といえば、社会保険労務士や司法書士、弁護士が挙げられます。
しかし訴訟を考えているのであれば、弁護士に依頼するのが解決への近道でしょう。
会社への交渉や裁判手続等を代理で行ってくれる、心強い味方といえます。
弁護士費用の面で不安があるなら、弁護士保険を検討してみるのも良いでしょう。
会社の責任が認められたパワハラの裁判事例
これまで見てきたパワハラの6つの分類にもとづき、それぞれ過去にどのような裁判事例があったのかを確認します。
身体的攻撃によるパワハラの裁判事例
社員Aが被害者に対してわざと大きな咳をするなどの嫌がらせをしていたことに腹を立て、「いい加減にせえよ。ぼけか。あほちゃうか。」と社員Aに対して言ったところ口論となり、社員Aが席を立って近くにあった椅子を足蹴にしたところ、椅子が被害者の右脚付近に当たった。また,社員Aは、被害者の胸ぐらをつかんで前後に揺さぶった。その結果、被害者は右膝関節内血腫、頚部挫傷のため、今後4週間自宅安静を要するとの診断を受けたという事実が認められる事案において、被害者の慰謝料として、会社と社員Aに対し、5万5000円の支払いを認めた事例。 (大阪地判平成24年5月25日労判1057号78頁) |
精神的攻撃によるパワハラの裁判事例
出張中における仕事上の失敗の件で迷惑をかけたこともあり、上司の飲酒強要を断ることができなかった社員に対し、アルコールに弱いことに容易に気付いたはずであるにもかかわらず、「酒は吐けば飲めるんだ」などといい、社員のコップに酒を注ぐなどした行為及び夏季休暇中の社員に対し、「辞めろ!辞表を出せ!ぶっ殺すぞ,お前!」などと語気を荒く話して録音)し、社員に対する激しい怒りを露わにした行為について、パワハラ行為の慰謝料として、会社及び上司に連帯して150万円の支払いが認められた事例。 (東京高判平成25年2月27日労判1072号5頁) |
人間関係からの切り離しによるパワハラの裁判事例
会社が、一般社員用の社内報とは別にわざわざ一部の社員らに見せるための内容が簡素な専用社内報を作成し,それのみを一部の社員らに見せるという差別的な取扱いを行っていた行為について、社員らに対して不当な差別的取扱いを行っているとして不法行為の成立を認めた事例。 (長野地判平成24年12月21日労判1071号26頁) |
過大な要求によるパワハラの裁判事例
精神疾患による休職から復帰したばかりの中学教員に対して、休職以前から担当していた音楽科・家庭科に加えて、教員免許外の科目である国語科までを担当させ、その他の業務を軽減させることもなかったことに加え、パニック状態になるなど当該教員には明らかに悪化の兆候が認められたが、学校側は指導力不足と認定し、不要な研修を受講させるなどの対応を重ねた行為により、自殺に追い込んだことについて、不法行為が成立し、県および市に対して約2183万円の支払いを認めた事例。 (鹿児島地判平成26年3月12日労判1095号29頁) |
過小な要求によるパワハラの裁判事例
路線バスを駐車車両に接触させる事故を起こした運転士に対し、上司に当たる営業所長が下車勤務として炎天下にもかかわらず1ヶ月の営業所構内の除草作業を毎日命じ、さらに乗車勤務復帰後に1ヶ月以上の添乗指導(指導運転士が同乗して本人の運転状況等を指導すること)を受けるよう命じた営業所長の行為について、裁量の範囲を明らかに逸脱した違法な命令に当たり、営業所長および使用者である会社に対して、慰謝料の支払いを認めた事例。 (横浜地判平成11年9月21日判タ1085号208頁) |
個の侵害によるパワハラの裁判事例
社員がA氏から個人的に賃借し、住居として個人的に使用していた住宅の明け渡しをA氏から求められたがこれに応じなかったところ、A氏は知人でもあった当該社員が務める会社の専務に対して、話し合いによる解決への協力を依頼したところ、当該専務は協力を了承し、至急話し合いに応じるよう命じた。加えて、社員の直属の上司に当たる次長は、少なくとも二か月間前後八回にわたり、当該社員が解決に応じなければ、左遷などの人事上の不利益が生じることもほのめかしながら、住宅の明け渡しを執拗に求めたという事案について、次長の行為は、説得の範囲を超える違法な行為と判断し、当該次長および使用者である会社に対して、連帯で慰謝料の支払いを認めた事例。 (横浜地判決平成2年5月29日判タ745号182頁) |
最後に|自分を守るために弁護士に相談しよう
パワハラ問題を一日も早く解決するには、弁護士への相談をおすすめします。
自身の心身の健康を守るためにも、パワハラ問題は長引かせないことがポイントです。
弁護士であれば適切なアドバイスをしてくれ、会社との任意交渉や訴訟に移行するときもスムーズに手続を代行してくれます。
弁護士費用は高額な印象がありますが、弁護士保険に加入しておけば費用を補償してもらえますので、検討してみるのも良いでしょう。
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