日常生活の中で、不意のトラブルやさまざまな人間関係により精神的苦痛を受けている人は意外と多いのではないでしょうか?
その際、状況によっては泣き寝入りをするのではなく、裁判による相手への慰謝料請求を検討する場合もあるかもしれません。
ただ、裁判を起こすには費用がかかり、トラブルの内容にもよりますが、概ね80万円前後が必要な場合もあります。
裁判の結果次第では損害賠償により請求した金額よりも多い金額を費用として支払うこともあるので、事前に相場を知っておくことは重要です。
この記事では、そもそもどのような場合に精神的苦痛としての損害賠償を請求できるのか、また、裁判にはどのくらいの費用がかかるのかについて解説しています。
記事の内容を参考に、実際のトラブル解決に役立ててみてください。
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そもそも精神的苦痛とは
精神的苦痛による裁判を起こす前に、そもそも精神的苦痛とはどのような状態なのかを理解しておきましょう。
精神的苦痛とは精神面での苦痛や損害のことです。通常、他人のどのような行動で精神がどれだけ傷つくかは、人によって異なります。
また、精神が傷ついたことを形にしてみせることはできないため、精神的苦痛を証明することは難しいという特徴があります。
しかし、損害の大きさを各個人が傷ついた度合いのみを基準にしていては、たとえば被害者が嘘をついたときなどに判別が難しく、毎回曖昧なままに判断を下すことになってしまいます。
そこで、法においては、精神面での損害が発生する場面の方に着目し、ケースごとに精神が傷ついた度合いを判定して、ケースに応じた損害賠償を認めるという考え方を取っています。
つまり、傷ついた精神そのものではなく、精神を傷つけた行為によって慰謝料の成否を判断しようとするわけです。
精神的苦痛による裁判とは
精神的苦痛による裁判では、人の不法行為によって損害が発生した際に、その不法行為と損害の因果関係を見極め、損害に応じた慰謝料による賠償の可否やその金額について争います。
実際に精神的苦痛による慰謝料を請求するためには、前提として相手方に不法行為が成立していることと、被害者側が苦痛や悲しみなどの精神的な打撃を受けていることが必要です。
相手方の言動と被害者側の精神的苦痛に因果関係が認められれば不法行為が成立するため、損害賠償を相手に請求できます。
精神的苦痛で請求する慰謝料とは
ここで、改めて「慰謝料」という言葉を説明しておくと、慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償請求のことをいいます。
しかし、実は、民法には慰謝料という言葉は記載されていません。
民法709条では故意、または過失によって他人の権利利益を侵害した場合に、その賠償を求めることが認められているのみです。
また、民法710条では、財産以外の損害、つまり精神的損害に対しても損害賠償を認めることを規定しています。
このように、民法上では「慰謝料」という言葉は存在していませんが、精神的損害に対する損害賠償のことを一般的に慰謝料と呼んでいるのです。
精神的苦痛で慰謝料を請求できるケース
精神的苦痛で慰謝料を請求できることがわかったところで、具体的にどのようなケースで精神的苦痛が成立するのか気になるかもしれません。
ここでは、精神的苦痛を受けて慰謝料を請求できるケースについて解説します。
不倫やDVなど男女の交際におけるトラブル
夫婦は、法律上、婚姻という契約状態にあり、お互いに貞操義務を負います。
貞操義務とは、お互いに配偶者以外の人と性的な関係を持つべきではないということです。
貞操義務に反して不倫をした側の配偶者と不倫相手は、被害者である配偶者に対して精神的苦痛を与えたと判断されるため、被害者は慰謝料を請求できます。
また、DV被害についても精神的苦痛が成立します。DVとは、ドメスティック・バイオレンスの頭文字を取ったもので、配偶者や恋人など、親密な関係にある人、またはあった人からの暴力を指します。
暴力によって外傷を負った場合、治療費などの損害賠償や精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。
また、けがに繋がるような行為がなくても、心無い言動や態度によって相手を傷つけた場合や、金銭的な自由を奪って精神的負担を与える経済的DVも、精神的苦痛による損害賠償請求の対象となります。
特に、次のようなケースでは、慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。
- 嫌がっているのに性行為を強要する
- 避妊に協力しない
- 生活費を渡さない
- 自由に使えるお金を全く認めない
- 借金を強要する など
なお、配偶者の不法行為によって精神的苦痛を受けた場合は、その程度によって、損害賠償請求だけではなく、配偶者の有責による離婚も認められています。
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さまざまなハラスメント
さまざまなハラスメントによって精神的苦痛を受けた場合も、損害賠償請求が認められています。
ハラスメントには次のような種類があります。
- モラル・ハラスメント
- パワー・ハラスメント
- セクシャル・ハラスメント
モラル・ハラスメントとは、倫理や道徳に反した嫌がらせを意味します。家庭内だけではなく、職場や社会的コミュニティの中にも存在するものです。
たとえば、無視や暴言、嫌みをいう、不機嫌に振る舞うなどの行為は、いわゆるモラハラにあたります。
パワー・ハラスメントは、勤務者に対して立場が上の人間が、その職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、適正範囲を超えて精神的、身体的な苦痛を与える行為、または職場環境を悪化させる行為をいいます。
ここで、単に立場が上というのは、上司から部下という関係だけではなく、たとえば、部下の影響力が強く、人間関係面では部下の方が上司より上の立場にある、といった場合にも当てはまります。
そのほか、先輩と後輩、同僚同士など、職場でのあらゆる関係において成立します。
身体への直接的な攻撃や精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大または過小な要求、プライバシーの侵害などがいわゆるパワハラにあたります。
セクシャル・ハラスメントとは、職場での性的な言動により、労働条件の不利益を被ることや、就業環境が害されることを指します。
これは男女雇用機会均等法の第11条の条文にも記載されています。
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用元|男女雇用機会均等法第11条
セクシャル・ハラスメントには、対価型セクハラと環境型セクハラがあります。
対価型セクハラとは、男女を問わず職場において労働者の思いに反する性的な言動がおこなわれ、拒否することで解雇・降格・減給などの不利益を受けることをいいます。
たとえば「お酒の席でお酒を注ぐことを強要する」、「職場内で昇進をちらつかせて性行為を強要する」、「取引先に契約打ち切りや契約更新をちらつかせて愛人契約を求める」などの行為が対価型セクハラにあたります。
環境型セクハラとは、職場において労働者の意に反する性的な言動によって、仕事に支障が生じることをいいます。
「上司が通りすがりに胸を触る」、「社内で不倫しているという噂を執拗に流す」、「仕事上必要ないヌードポスターを貼り続けている」などの行為が環境型セクハラにあたります。
プライバシーの侵害や名誉毀損
プライバシーの侵害とは、公開していない私生活の情報を、望まない第三者に開示・公開されることをいいます。
たとえば、SNSやインターネット上の掲示板で、誰かが勝手に自分の住所や電話番号を記載したことによって精神的苦痛が生じた場合、損害賠償請求が可能です。
また、名誉を傷つける行為や不法行為によって、人の社会的地位を低下させる状態を作る「名誉毀損」が成立する場合も、精神的苦痛による慰謝料を請求できます。
たとえば、大勢の人の前やインターネット上などで「○○は不倫している」などの吹聴・書き込みをするのは名誉毀損に当たる可能性があり、これにより精神的苦痛が生じた場合は慰謝料を請求できます。
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交通事故
自動車による交通事故に遭った場合、自動車やバイク等の物損だけでなく、けがを負ってしまった場合や死亡事故の場合には、慰謝料の請求が可能です。
また、後遺障害が残存した場合には、後遺障害による慰謝料を加算できます。
また、たとえば事故がトラウマになって日常性生活に支障をきたすようになるなど、精神的苦痛が発生しているケースでは、慰謝料を増額することができます。
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労働問題
職場で発生する不当労働行為によって精神的苦痛が生じた場合も、慰謝料請求が可能です。
不当労働行為とは、会社や事業者が労働組合労働者の団体交渉権や団体行動権団結権などを侵害する行為で、労働組合法第7条によって禁止されているものです。
不法労働行為の一例を挙げると以下のとおりです。
- 労働組合に加入しているという理由で昇給されなかった
- ストライキに参加したことを理由に組合員を解雇した
- 組合員を新年会に参加させなかった
- 入社時に組合に加入しないという誓約書を書かされた
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精神的苦痛で慰謝料を請求できないケース
相手方に不法行為が成立しない場合や、相手方の責任が認められない場合には精神的苦痛による慰謝料を請求することができません。
たとえば次のようなケースでは、精神的苦痛を生じていても、慰謝料は請求できない可能性があります。
- 性格の不一致による離婚、双方に原因があるトラブル
- 肉体関係のない軽い浮気
- 交通事故の物損事故
- 会社の悪質性が低い労働問題
性格の不一致による離婚の場合、夫婦双方の離婚の責任があるため、慰謝料の支払い対象にはなりません。
また、夫婦双方に不貞行為や傷害などの行為が認められて、その責任が同じ程度であるときも、実際の慰謝料の支払いが生じない場合があります。
次に、不倫によって慰謝料を請求する場合は、配偶者と相手が肉体関係にあることが必要です。
デートをしただけのような軽い浮気の場合は、慰謝料請求の対象とはなりません。
交通事故では、人身事故の被害者は慰謝料を請求できますが、物損事故の場合は、被害者に精神的苦痛が生じても、慰謝料請求の対象とならないケースがほとんどです。
労働問題によって精神的苦痛が発生した場合も、会社の悪質性が低ければ損害賠償請求ができないケースがあります。
悪質性の低さとは、何らかの事情で同情できる場合や、被害者にも問題がある場合、計画的ではなく突発的な出来事が原因になっている場合等を指します。
もちろん、相手方に何らかの処分や処罰が下る可能性はありますが、慰謝料請求まではできないケースもあることを理解しておきましょう。
精神的苦痛が適用される実際の法律
精神的苦痛によって損害賠償請求ができるのは、法律の仕組みによって定められています。
ここでは精神的苦痛が適用される法律を紹介します。
不法行為|民法710条・711条
民法710条では、損害賠償が請求できる場合について規定されています。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用元:民法
誰かを傷つける、名誉を侵害する、財産権を侵害するなどの行為は、財産に対する損害賠償はもちろん、財産以外の損害についても賠償の必要があるとしています。
また、民法711条では精神的苦痛を受けるのが通常である人物の賠償について規定しています。
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
引用元:民法
たとえば、ある人が亡くなった場合、一般的にはその人の父母や配偶者、子どもなども精神的な苦痛を受けることになり、これらの人に対しても賠償責任が生じることになります。
債務不履行|民法415条
債務不履行とは、契約上の義務をおこなわないことです。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用元|民法
債務不履行の条文には、不法行為のような財産以外の損害についての明記はありませんが、実務上、債務不履行による財産以外の損害についても認められているのが現状です。
精神的苦痛による損害賠償請求をするための流れ
精神的苦痛によって損害賠償を請求する場合、いきなり裁判になるわけではありません。
ここでは、損害賠償を請求するための流れを解説します。
当事者間での話し合い
精神的苦痛による損害賠償を請求する場合、まずは当事者同士で話し合いをするのが基本です。
どのような事実によって、どのような損害が生じたのか、お互いに確認したうえで、慰謝料を支払う意思があるか、慰謝料をどれだけ支払うかを確認します。
なお、当事者間の話し合いの段階で弁護士に依頼するケースや、慰謝料請求の本気度を示すために内容証明郵便を送るケースもあります。
裁判所の仲介により話し合う調停
話し合いによる交渉が決裂した場合は、裁判所を仲介者にする調停手続きを利用できます。
調停とは、裁判官と調停委員の2人が選任され、お互いの当事者の話を聞いて妥当な解決案を提案してくれるシステムです。
月に1度期日が設けられ、当日裁判所に出向いて話し合いがおこなわれます。当事者の一方が呼ばれて話しをして、次にもう一方が話しをします。
そうして、お互いの主張を整理し、最終的に提案される調停案に双方が納得できれば、事件は解決となります。もし調停案に納得できない場合は、裁判に移行することになります。
事情に詳しい人に話を聞いてもらって問題を解決したい場合や、妥当な賠償額を知りたい場合は、調停を検討するといいでしょう。
損害賠償請求の裁判
話し合いや調停でも納得できる結論に達しない場合は、裁判となります。
裁判を起こす場合は、裁判所に訴状や証拠、証拠説明書などを提出し、裁判所手数料と予納郵便代を納めます。
訴訟を起こした後は、月に1回程度の期日に準備書面を提出して判断を求めます。裁判所では当事者の主張とそれを裏付ける証拠を基に判断を下します。
裁判で下された判決は、基本的に覆らないため、裁判を起こすかどうかはしっかり検討するようにしましょう。
精神的苦痛で慰謝料を請求する裁判の費用
精神的苦痛による慰謝料を請求するには、まずは示談交渉をしますが、交渉にて事件が解決しない場合は裁判になるケースがあります。
裁判を起こす場合はさまざまな費用が発生するため、事前に把握して準備を進めておくことが大切です。
ここでは、精神的苦痛で慰謝料請求をする裁判において、必要となる費用の種類や、その目安を紹介します。
裁判で必要になる費用の種類
裁判に必要になる費用には、訴訟費用と弁護士費用があります。
訴訟費用とは、裁判を起こすために必要な費用です。訴訟費用は、裁判を起こす側が立て替えたのち、敗訴側が負担するのが一般的です。
主な訴訟費用の内訳は次のとおりです。
- 裁判所手数料:裁判所に納める裁判所手数料
- 予納郵便代:裁判中の連絡に必要な切手代
そのほか、証人の旅費や日当、鑑定が必要な場合の鑑定費用、裁判中の調書をコピーするための謄写費用などが発生する場合もあります。
弁護士費用とは、裁判での対応を弁護士に依頼するための費用です。
一般的な弁護士費用の内訳は次のとおりです。
- 相談料:弁護士に精神的苦痛や慰謝料請求について相談するための費用
- 着手金:示談交渉や裁判への対応が決まった場合に支払う費用
- 報酬金:事件が解決した際に弁護士に支払う費用
- 日当:弁護士に遠方への出張や裁判への出廷が発生した場合の費用
- 実費:調査や書類作成など弁護士に実務に掛かる費用
慰謝料請求での訴訟費用の目安
慰謝料請求での訴訟費用のうち、裁判所手数料は請求する慰謝料の金額によって次のように定められています。
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引用元|裁判所 手数料
予納郵便代は訴えを起こす裁判所によって異なります。
たとえば、東京地方裁判所では、原告・被告がそれぞれ1名ずつの場合、6,000円が必要です。
また、原告・被告が1名ずつ増えるごとに、2,000円を追加して納めます。
裁判に証人を呼ぶ場合、1日当たり8,000円程度を上限にした日当を支払うほか、交通費や宿泊費は旅費として実費を支払います。
裁判に鑑定が実施される場合は、鑑定費用の負担も必要で、数十万円単位での出費となります。
また、裁判所で作成された調書の謄写費用は、1万円から2万円程度を想定しておくといいでしょう。
慰謝料請求での弁護士費用の目安
弁護士費用のうち、相談料の相場は30分で5,000円から1万円程度です。
ただ、法律時事務所によっては初回相談無料の場合や、相談のみ完全無料にしている場合もあります。
着手金は最低額を10万円に設定している法律事務所が多いものの、着手金を無料にしている法律事務所もあります。
たいていは20万円から30万円程度が相場となります。
報酬金は慰謝料の金額を基に算出することが多く、請求権が認められた慰謝料の金額の十数%を支払う場合や、定額の報酬金を支払う場合があります。
報酬金の割合は15%から20%程度が相場で、たとえば200万円の慰謝料の請求権が認められた場合、30万円から40万円が報酬金となります。
日当は、弁護士が事務所以外で活動する場合の費用で、相場は1日3万円から5万円程度です。また、裁判所への出廷については1回ごとに日当を別途設定していることもあります。
実費は実際に掛かった費用を請求されるケースや、一律料金で請求されるケースなどがあります。
弁護士費用は法律事務所によって金額が異なるため、事前に必ず確認して、契約前にお互いに明確にしておくことが重要です。
精神的苦痛による損害賠償請求での裁判費用の目安
ここまでの裁判に必要な費用の種類を踏まえて、精神的苦痛による損害賠償請求裁判での最終的な費用の目安を紹介します。
今回は一例として、次の条件での裁判費用の目安を考えます。
- 特定の人物1名による精神的苦痛の賠償請求のための裁判
- 東京地方裁判所で実施
- 原告1名、被告1名、証人なし、弁護士の裁判所への出廷日数3日
- 200万円の慰謝料を請求
- 判決によって被告への200万円の慰謝料請求が認められる
この場合の訴訟費用は、概ね4万1,000円となります。
- 裁判所手数料:1万5,000円
- 予納郵便代:6,000円
- 謄写費用:2万円
- 証人への旅費や日当、鑑定費用:なし
弁護士費用は、概ね79万円です。
- 相談料:1万円
- 着手金:20万円
- 報酬金:200万円×20%=40万円
- 日当:5万円×3日=15万円
- 実費:3万円
最終的に今回の条件での精神的苦痛による損害賠償請求の裁判は、訴訟費用4万1,000円、弁護士費用79万円で、合計83万1,000円の裁判費用が必要になります。
ただし、訴訟費用は裁判所によって、弁護士費用は事務所や事件内容によって異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。
精神的苦痛で損害賠償を請求する際に必要となるもの
精神的苦痛を受けた場合に損害賠償を請求するには、加害者との交渉や裁判が必要です。
ただし、何もない状態で交渉や裁判に臨んでも問題は解決できません。
ここでは、損害賠償を請求する際に必要なものを解説します。
精神的苦痛を受けたことを証明できる証拠
損害賠償を請求するための示談交渉や裁判では、被害者側が主張の根拠を証明しなければなりません。
そのため、精神的苦痛を受けたことが証明できる証拠を揃える必要があります。
まずは精神的苦痛の原因となった事実の証拠です。
不貞行為が原因なら、不貞行為を裏付ける写真やメール、ハラスメントの場合は音声データや証人による証言などを準備しましょう。
実際の裁判では、事実の有無や証拠の有無が大きな争いとなります。
また、慰謝料の金額はどれだけの精神的苦痛を受けたかによっても大きく変わります。
どれだけの精神的苦痛があったかの証拠も必要です。腹痛や胃痛、うつ病など、肉体的な影響があった場合は診断書を取っておきましょう。
また、ハラスメントを受けていたときの日記も精神的苦痛の証明として有効です。
そのほか、仕事を辞めてしまったこと、部署の異動を願い出たこと、カウンセリングに通ったことなど、精神的苦痛に影響された具体的な状況や事実も、情報としてまとめておきましょう。
裁判を起こすための書類や費用
加害者が慰謝料の支払いに応じない場合は、裁判に判断を委ねることになります。
裁判を起こすには、必要書類の作成や提出のほか、裁判費用を準備しなければなりません。
必要な書類は訴状、証拠、証拠説明書などです。実際の書類作成や提出は弁護士に依頼することもできるので、難しそうなものは無理せず相談してみましょう。
裁判に掛かる費用については先程解説したとおりです。
裁判を起こすと決めた時点から、これらを準備しておきましょう。
加害者の情報
裁判で損害賠償を請求する場合、加害者に関する情報が必要です。
加害者を特定していなければ、被告として訴えることができないためです。
そのため、加害者の氏名・住所などを事前に調べておく必要があります。
精神的苦痛による損害賠償請求が成立した実際の事例
精神的苦痛による損害賠償を求めた裁判で、請求権が認められた実際の事例をいくつか紹介します。
悪臭・異臭による精神的苦痛の判例
被告が自宅近辺の野良猫に餌を与えていたことで、庭に野良猫が侵入するようになり、糞尿により庭が汚された原告が、睡眠障害を伴う神経症を発症するなど、精神的苦痛を被ったとして、損害賠償を請求した事例です。
この裁判では、原告がネット設置費用8,100円、砂利洗浄・植木植え替え費用45万500円、精神的苦痛による慰謝料100万円、弁護士費用14万円、合計159万8,600円を請求しました。
結果、被告に対して55万8,100円と訴訟費用の3分の1の支払いが命じられました。
不当な配置転換命令による精神的苦痛の判例
ある一般財団法人の職員男女7人が、職場による不当な配置転換命令によって精神的苦痛を受けたとして、一人当たり約550万円から約1,000万円の損害賠償を請求した事例です。
この裁判では、被告に対して原告のうち4人の女性に対する人事権の乱用を認め、慰謝料など110万円ずつ支払うことを命じる判決が下されました。
最後に|精神的苦痛での裁判費用を把握したうえで行動を起こそう
精神的苦痛により苦しんでいる場合は、裁判による損害賠償も視野に入れてトラブル解決を目指しましょう。
その際、一般的には弁護士に相談することになりますが、弁護士費用や裁判の訴訟費用を把握しておかなければ、慰謝料の金額よりも高額になってしまう可能性もあります。
まずは、この記事を参考に実際の費用を把握したうえで、費用を賄うだけの損害賠償請求ができるのか、または、その費用を払ってでも訴える必要があるのかを検討してみてください。
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