近隣トラブル【騒音】の対処法と未然に防ぐための対策 | ベンナビ弁護士保険  

近隣トラブル【騒音】の対処法と未然に防ぐための対策

「生活音が気になる」「音がして眠れない」「集中できない」と、悩んでいませんか?

「自分の家では自由に、快適に暮らしたい」と思うのは、ごく自然なことです。

とはいえ、近隣住民とトラブルになりたくない気持ちから、相談をためらっている方もいるかもしれません。

集合住宅は、一戸建てに比べて床や壁が薄いため、どうしても音・振動が伝わりやすくなります。騒音で悩んでいるときは、まず管理会社や大家に相談してみましょう。

この記事では、騒音トラブルの種類や対処法、対策を紹介します。

この記事を監修した弁護士
荒生 祐樹  弁護士 ( さいたまシティ法律事務所)
立命館大学法科大学院 卒業。新聞、テレビ番組などメディアへの出演経験をもち、数々の著書も執筆にも携わる。
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騒音トラブルの種類

騒音には、話し声や振動音など、さまざまな種類があります。

  • 話し声・足音
  • 楽器演奏
  • エンジン音
  • その他:振動音 など

話し声・足音

騒音トラブルの代表例といっても過言ではないのが、話し声や足音です。

【例】

  • 大きな声での電話
  • 怒鳴り声
  • 子どもが走りまわる足音
  • 夜に大人数で騒ぐ など

集合住宅で暮らしていると、上の階の足音や話し声は、どうしても響きがちです。

 

大人が普通に生活をしている場合でも足音は聞こえているため、子どもが走りまわる足音となれば、「うるさい」と感じる方もいるでしょう。

また、エントランスなどの共用部分で話す声が、耳障りに感じる方もいます。

 

話が盛り上がると、だんだん話し声や笑い声が大きくなりやすいものです。

結果、他の住人から不快に思われトラブルに発展することがあります。

楽器演奏

ピアノやギター、フルートなどの楽器演奏も騒音トラブルになっています。

 

例えば、以下のようなケースです。

【例】

  • 夜間の弾き語り
  • 大音量での演奏
  • 鍵盤やペダルを踏む際の振動音

集合住宅の中には、入居ルールとして楽器演奏を禁止しているところもあります。

 

禁止されているところでの演奏は、規約違反です。たとえヘッドホンをつけて演奏していても、ペダルの振動音やドラムの打音が響きやすいため、騒音トラブルの原因になり得ます。

また、演奏可能な時間内でも、大音量で演奏すると苦情がくる可能性があります。

 

隣人に在宅勤務の方や、夜勤明けで睡眠中の方もいるかもしれないので、近隣住民への配慮が必要といえるでしょう。

エンジン音

車やバイクのエンジン音も、騒音トラブルのひとつです。

 

早朝や深夜は、とくに音が響きやすい時間帯です。「うるさくて寝つけない」「音のせいで目が覚めた」とストレスを感じる人は珍しくありません。

睡眠がうまくとれなかった場合、仕事のパフォーマンスなどが落ちてしまう可能性があります。その結果、「エンジン音がうるさくて眠れなかったせいだ」と、トラブルに発展するケースが考えられるのです。

 

エンジンをふかす、長時間アイドリングをする、といった行動も注意が必要といえます。

その他:振動など

騒音トラブルは、「音」だけではありません。

衝撃音や振動音も含まれています。

 

例えば、以下のような生活音がトラブルに発展するケースがあります。

【例】

  • ドアの開閉音
  • ソファーに座ったときの振動
  • シャワー音
  • 掃除機の音
  • 物を落とした衝撃音 など

乱暴にドアを開け閉めした場合には「ドン」、ペットボトル飲料などを落とした際は、「ドスン」と、結構大きな衝撃音となり、響きます。

 

また、掃除機や洗濯機は、床から直接振動が伝わる特徴があります。

そのため、時間帯によっては生活音であっても「この時間にするのは、やめてほしい」と思う人も少なくないのです。

 

ビー玉を転がす音、荷物を引きずる音など、振動音が生じるケースは他にも多くあります。

生活音に関する騒音トラブルは問題認定が難しい

騒音トラブルに悩む方は少なくありません。

 

一方で、騒音トラブルは、問題だと認定するのが難しい側面があります。

なぜなら「音」は、人が生活を送るうえで、どうしても生じてしまうものだからです。

 

例えば、掃除機や洗濯機は、人々の暮らしに欠かせません。使用すれば少なからず振動音は生じるものであり、止めようと思って止められるものではありません。

 

吸音シートを敷くなどの工夫をしても、完全に音を消すことはできないでしょう。

そのため、騒音問題をはじめとする社会生活上のトラブルには、違法性の判断基準として「受忍限度が最高裁判例で認められていますす。

 

受忍限度とは

社会生活を営むうえで、騒音・振動などの被害の程度が、社会通念上我慢できるとされる範囲。この範囲を超えると加害者が違法とされることがある

引用元:goo国語辞書|受忍限度(じゅにんげんど)の意味

騒音トラブルを訴えたい場合は、この受任限度を超えているか否かがポイントになってくるのです。

 

「その範囲はどの程度なの?」と思う方もいるでしょう。

参考として、環境省では、環境基準値を以下のように定めています。

環境基準

地域の種類

昼間の基準値

(6時~22時)

夜間の基準値

(22時~翌朝6時)

療養施設が設置されているなど、静かにする必要がある地域

50デシベル以下

40デシベル以下

住宅街など、人が住むための地域

55デシベル以下

45デシベル以下

住居のほか、商業・工業施設の設置もある地域

60デシベル以下

50デシベル以下

参照元:環境省公式サイト|騒音に係る環境基準について

 

騒音が40~60デシベルを超えるかどうかが、「耐え難い騒音として認定されるかどうか」の分かれ道といえるでしょう。

 

基準値については、各市区町村の条例によっても変わります。

測定する際は、お住まいの地域の基準値を確認しましょう。

騒音に関する近隣トラブル対処法

「じゃあ、隣人の生活音が騒音に感じる場合は、我慢するしかないの?」と思った方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

騒音で悩んだ際、まずは同じ集合住宅に住む住民や、管理会社などに相談するのが重要です。

  • 住民に相談する
  • 証拠を集める
  • 管理会社や大家に対応してもらう
  • 自治体や警察に訴える
  • 弁護士に相談する

住民に相談する

部屋が近い住民に相談してみましょう。

騒音について聞いてみることで、困っているのは自分だけなのか、または周りの住民も困っているのかがわかります。

 

仮に、自分の家だけが悩まされている場合は、次のステップとして管理会社へ相談するのがおすすめです。

一方、周囲も不快だと感じているなら、騒音の程度が「害悪」「公害」になっている可能性があるため、自治会などに相談すると対応してもらえる可能性があります。

 

このように、近隣住民に相談することで、騒音の状況が明確になってきます。 

証拠を集める

騒音トラブルを確実に解決したい際には、証拠を集めるのが重要になります。

「証拠=騒音の証明」となり、管理会社や警察なども対応しやすくなるからです。

 

以下のような項目をボイスレコーダーなどで録音しておくのも、ひとつの方法です。

【例】

  • いつ
  • 何時ごろから
  • どんな音が
  • 頻度はどれくらいか など

また、騒音計で数値を出す 方法もあります。

 

騒音計で測定すると、周囲の騒音値がわかるため、騒音レベルか否かの基準を知ることができるでしょう。

騒音計は、レンタルする、通販サイトで購入するほか、スマホアプリからもできます。

 

測定方法も、音が聞こえる部分にマイクを近づけるだけ、と簡単です。ただ、長時間測定する可能性も考えられるので、三脚などで固定できるものがおすすめです。

管理会社や大家に対応してもらう

直談判するより、管理会社や大家に相談するのがおすすめです。

近隣トラブルは、当事者同士で話し合うと、かえってこじれてしまうケースが少なくありません。

 

管理会社や大家などに相談すると、共用部分に張り紙を貼り、注意喚起してもらえる可能性があります。

管理会社や大家は、管理者・責任者の立場なので、直談判するより角が立たず、穏便にすませられるでしょう。

 

また、騒音が悪質なものや、受忍限度を超えるものだと認められた場合は、「賃貸借契約解除」や「騒音行為の差止め」に至るケースがあります。

自治体や警察に訴える

管理会社や大家が対応しても解決しないときは、自治体や警察に相談してみましょう。

警察相談専用電話「# 9110」では、相談に対するアドバイスがもらえます。

 

ただし、自治会や警察も、必ず対応してもらえるとは限りません。

例えば、自治体では、「近隣住民がみんな騒音に困っている」状況でなければ、対応してもらうのは難しいです。また、警察の場合は、「事件性がない」と判断されると動いてもらえません。

 

警察に現場にきてほしい場合は、思いきって110番通報をしましょう。

身分がバレたくない方や不安な方は、匿名での通報も可能です。

弁護士に相談する

事件性が低いケースや、警察でも解決できないケースにも対応してもらえる可能性があるのが弁護士です。

 

弁護士へ相談すると、法的観点から当事者と交渉してもらうことが期待できます。万が一、近隣トラブルに発展してしまった際も、代理人として活動してもらえることもあります。

「弁護士費用は高そう」と思い、相談を踏みとどまっている方もいるかもしれませんが、無料相談を行っているところもあります。

 

騒音トラブルなどの証拠集めを、すべて自分で行うのは容易ではありません。法律のプロに相談してみてはいかがでしょうか。

近隣トラブルを未然に防ぐための対策

賃貸アパートやマンションにお住まいの方の中には、引っ越しを視野に入れている方もいるかもしれません。

再度、集合住宅へ引っ越す際には、以下のような対策をとり、近隣トラブルを未然に防ぎましょう。

  • 建物の防音性を確認する
  • 相場より安い物件には注意する
  • 住人によって生活時間帯が異なることを心得ておく
  • 日頃から隣人とコミュニケーションをとっておく

建物の防音性を確認する

建物の防音性を確認しましょう。

一般的には、木造の建物より鉄筋コンクリート造の建物の方が、防音性能は高いとされています。

 

ただ、自分で防音対策をするかしないかによっても、音の程度は変わってくるため、一概にはいえません。

そこで、可能であれば建物内を見学し、周囲の音の聞こえ方を確かめるのがおすすめです。

 

周囲の音がよく聞こえる状態ならば、防音性は低いといえるでしょう。

角部屋や、二重窓を採用している物件などは、比較的騒音リスクが低くなります。

相場より安い物件には注意する

相場より安い物件には注意しましょう。

なぜなら、安くするだけの理由があると考えられるからです。

 

例えば以下のようなケースです。

例】

  • 近くにトラブルメーカーが住んでいる
  • 下の階の住人が騒音に関して神経質
  • 事故物件

事故物件も考えられますが、その場合は管理会社や大家は、入居者に対して告知義務があります。

そのため、告知がなく安い物件に関しては、近隣住民になんらかの理由があり、入居者が定着しないため、相場より価格を安く設定して入居者を募集している、と考えられるのです。

住人によって生活時間帯が異なることを心得ておく

住人によって生活時間が異なることを心得ておきましょう。

集合住宅では、さまざまなライフスタイルの人が暮らしています。夜勤をしている方もいれば、在宅勤務の方もいるでしょう。1人暮らしの方もいれば、子育て世帯もいます。

例えば、1人暮らしの方は、仕事から帰宅後に洗濯機をまわすケースも多いものです。

子どもがいる世帯では、子どもの足音や泣き声が、どうしても響きがちです。

こうしたライフスタイルが似ているなら、「お互いさま」と騒音には感じないかもしれませんが、生活リズムが異なる場合、「うるさいな」とストレスを感じやすくなります。

生活リズムが異なる人もいることを、念頭においておく必要があるでしょう。

日頃から隣人とコミュニケーションをとっておく

日頃から隣人とコミュニケーションをとっておくのも重要です。

良好な人間関係を築いておくことで、近隣トラブルに巻き込まれにくくなります。

例えば、『上の階の住人と話したことがない』とします。夜に物音が聞こえると、「眠れない」とストレスに感じてしまうでしょう。

しかし、コミュニケーションをとる中で、相手が「看護師で働いている」「夜遅くに帰ってくることも多い」ことを知ったとしたら、どうでしょうか。

「今、帰宅したのかもしれない」と想定できるので、イライラが軽減するのではないでしょうか。今までより、物音を小さくする配慮をしてもらえる可能性もあります。

エントランスなどで顔を合わせた際には、相手から「いつも夜うるさくてすみません」といった言葉がかけられるかもしれません。

良好なコミュニケーションかとれるかどうかで、お互いの心理的ストレスが軽減できるでしょう。

最後に

誰でも、近隣トラブルには巻き込まれたくないものです。しかし騒音トラブルは、ふとした原因から生じてしまいやすいです。

集合住宅では、さまざまな生活習慣の人が、ひとつ屋根の下に暮らしています。

生活時間帯が異なる人、子育て中の家庭もあるため、自分が過敏に反応していないか、周囲はどう受け止めているか確認しましょう。

それでも耐え難い騒音の場合や、意図的に騒音を出している場合には、警察や弁護士に相談し、対応してもらうのがおすすめです。

また、引っ越しを検討するのも、ひとつの手段かもしれません。賃貸は分譲住宅に比べて、引っ越しやすいところがメリットです。

自分が快適に暮らせるよう、対策を考えていきましょう。

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