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相続させたくない人がいるときの対策と注意点|相続人との続柄別に解説

  • 「相続させたくない相続人がいる」
  • 「相続させたくない人から相続権を奪うことはできないのかな?」

相続させたくない人から相続権を完全に奪う方法は、まったくないというわけではありません。

以下の2つの場合には、相続権を失います。

  • 相続欠格に該当する場合
  • 相続人の廃除がなされた場合

いずれも要件がかなり厳しく、要件を満たすケースは稀です。

相続させたくない人がいる場合、現実的には、以下のような方法を取ることが考えられます。

  • 遺言書を利用する
  • 遺留分を放棄してもらう
  • 遺留分を主張しないよう遺言書に「付言事項」を記載する
  • 財産をなるべく残さない

これらの対策を取ることで、相続させたくない相続人にわたる財産を減らすことが可能です。

この記事では、相続させたくない相続人の相続権を奪う方法や、財産がなるべくわたらないようにする方法について詳しく解説します。

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この記事を監修した弁護士
監修者情報
三上 貴規(日暮里中央法律会計事務所)
早稲田大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法務研究科へ上位入学。第一東京弁護士会 所属。現在は日暮里中央法律会計事務所の代表弁護士を務める。 (※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)

相続させたくない場合でも相続権を完全に奪うことは難しい

相続させたくない相続人がいる場合にも相続権を完全に奪うことは難しいのが現状です。

ここでは、相続権を完全に奪うことが難しい背景などについて解説します。

民法で「法定相続分」が定められている

法定相続分とは、民法で定められている相続割合のことです。

遺産の分割は、有効な遺言書がない限り、相続人同士で話し合って決めるのが原則です。

法定相続分は、遺産を分割する際の目安となります。

以下は、相続人の構成別の法定相続分です。

相続順位

内容

相続割合

必ず相続人になる

配偶者

第1順位がいる場合1/2

第2順位がいる場合2/3

第3順位がいる場合3/4

第1順位

子ども、孫など直系卑属

1/2(配偶者がいる場合)

第2順位

親や祖父母など直系尊属

1/3(配偶者がいる場合)

第3順位

兄弟姉妹

1/4(配偶者がいる場合)

相続させたくない相続人がいる場合でも、遺言書を作成するなどの対処をしない限り、法定相続分を目安に話し合いによって遺産が分割され、相続されてしまう可能性があります。

遺言書を作成することで、ある程度対処可能ですが、それでも完全に排除するのは難しいです。

その理由は次章で解説する、「遺留分」という制度があるためです。

兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」が認められている

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障されている最低限の相続権のことです。

遺族の生活の保障のために、一定の割合の財産が相続人にわたるように定められています。

たとえば、被相続人が相続させたくない人に財産が渡らないように遺言書を書いたとしても、遺留分は保障されるのです。

なお、相続放棄するとその人の遺留分は失われます。

相続順位や何人相続人がいるかによっても遺留分は異なります。

いずれにしても、遺留分が認められている以上、完全に相続権を喪失させるのは難しいといえます。

ただし、相続権を完全に喪失する場合がまったくないわけではありません。

次章では、相続権を完全に喪失する場合について解説します。

相続権を完全に喪失する2つのパターン

ここでは、相続権を完全に喪失する2つのパターンについて解説します。

相続させたくない相続人を「廃除」する

相続させたくない相続人を「廃除」することができれば、相続権を失わせることが可能です。

相続人の廃除に関して、民法892条では以下のように定められています。

(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

引用元:民法第892条|e-Gov法令検索

相続人の廃除は、相続人が以下の廃除事由のいずれかに該当する場合に認められます。

  • 被相続人に対して虐待または重大な侮辱をした場合
  • 著しい非行があった場合

たとえば、相続人が被相続人に対してひどい暴力を加えていた場合や、多額の財産を勝手に使い込んでいた場合などには、相続人の廃除が認められる可能性があります。

相続人の廃除が認められるためには、家庭裁判所による廃除の審判が必要となります。

そのためには、相続人が廃除の要件を満たしている証拠(虐待している証拠など)を提出し、その事実が認められる必要があります。

相続人の廃除が認められたとしても、代襲相続が発生する可能性がある点には注意しておきましょう。

つまり、廃除された相続人に子がいる場合は、その子が代襲相続人として相続権を得るということです。

相続欠格に該当すると相続権を失う

特定の相続人が民法891条で定められる相続欠格事由に該当する場合には、相続権を失います。

なお、相続欠格事由は以下のとおりです。

  • 故意に被相続人または同順位以上の相続人を殺害、または殺害しようとしたために刑に処せられた場合
  • 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発や告訴をおこなわなかった場合(ただし、一定の例外がある)
  • 詐欺や強迫によって、被相続人が遺言をすることを妨害するなどした場合
  • 詐欺や強迫によって、被相続人に遺言をさせるなどした場合
  • 被相続人の遺言書を偽造するなどした場合

このような場合には相続欠格に該当し、被相続人の意思にかかわらず相続権を失います。

ただし、このような状況はめったにないため、相続欠格によって相続権を失うケースは少ないといえます。

相続させたくない場合の4つの対処法

ここでは、相続させたくない相続人がいる場合の現実的な対処法として4点を解説します。

遺言書を利用する

遺言書を利用することで相続させたくない人にわたる遺産の割合を減らすことが可能です。

ただし、ここまでにも解説したとおり、遺言書で相続させたくない相続人にわたる遺産の割合をゼロにしたとしても、遺留分が認められる場合には最低限の相続権が認められてしまいます。

もともと遺留分の認められていない兄弟姉妹であれば、この方法によって財産が渡らないようにすることは可能です。

遺留分を放棄してもらう

兄弟姉妹以外の法定相続人の場合、遺言書で取得できる遺産の割合をゼロにしたとしても、遺留分が認められてしまいます。

そこで、遺留分を放棄してもらうという方法が考えられます。

遺留分は、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得ることで放棄することができます。

ただし、遺留分の放棄を強制することはできないため、放棄してくれないか打診することしかできません。

遺留分を主張しないよう遺言書に「付言事項」を記載する

遺言書には、法律に定められていない事項を記載することもできます。

これを「付言事項」といいます。

付言事項には法的効力はありませんが、遺言者の気持ちを伝えることができます。

そこで、遺言書に付言事項として、遺留分を主張しないでほしいことを記載することが考えられます。

遺言者の気持ちが伝われば、遺留分の主張を思いとどまってくれる可能性があります。

財産をなるべく残さない

特定の相続人にできるだけ財産が渡らないようにしたいのであれば、そもそも財産を減らしてしまい、なるべく遺さないという方法も考えられます。

しかし、この場合注意すべきなのは、ほかの相続人へわたる財産も減らしてしまうことになる点です。

特定の一人にわたる額だけを減らしたいのであれば、財産そのものを減らす方法は有効ではないかもしれません。

相続させたくない人の続柄ごとに対処法を解説

ここでは、相続させたくない人の続柄ごとの対処法を解説します。

配偶者・子ども・親に相続させたくない

配偶者・子ども・親には遺留分が認められているため、遺言書で取得できる遺産の割合をゼロにしたとしても、遺留分を主張される可能性があります。

相続権を完全に排除するためには、相続欠格に該当したり、相続人の廃除がなされたりする必要があります。

また、その相続人の協力が必要となりますが、遺留分を放棄してもらったり、遺留分を主張しないよう遺言書に「付言事項」を記載したりする方法が考えられます。

兄弟姉妹に相続させたくない

兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、兄弟姉妹に相続させたくない場合は、遺言書で取得できる遺産の割合をゼロにする方法が有効です。

ただし、遺言書を無効とされてしまうと、兄弟姉妹に遺産がわたってしまう可能性があるため、法律に従って有効な遺言書を作成する必要があります。

相続させたくない人がいるときに弁護士に相談すべき理由

ここでは、相続させたくない人がいるときに弁護士に相談すべき理由について解説します。

相続欠格・相続人の廃除の可能性を模索できる

弁護士に相談することで、相続欠格・相続人の廃除の可能性を模索することが可能です。

特定の相続人から相続権をはく奪する最も有効な手段が、相続欠格・相続人の廃除です。

しかし、相続欠格・相続人の廃除が認められるためには、ここまでにも解説したとおり、相続欠格事由・廃除事由に該当する必要があります。

これらの事由については、それを証明する必要があります。

弁護士に相談することで、証明まで見据えた相続欠格・相続人の廃除の可能性を模索できるでしょう。

可能な限り遺産をわたさないようにするアドバイスをもらえる

相続欠格・相続人の廃除が難しい場合にも、可能な限り遺産をわたさないようにするアドバイスをもらえます。

相続欠格・相続人の廃除が認められない場合には、完全に相続権をはく奪することは難しいものの、それ以外のベストな方法を考えて提案してくれることが期待できます。

どのような方法が適しているかは状況によって異なります。

ご自身にとって最も適した方法をアドバイスしてもらえるため、弁護士に依頼することが望ましいのです。

まとめ|相続させたくない人がいるなら弁護士に相談を

以上、この記事では相続させたくない人に相続させない方法について解説しました。

相続させたくない人から相続権を完全に奪う方法は、まったくないというわけではありません。

しかし、完全に相続権を失う「相続欠格」「相続人の廃除」はいずれも要件がかなり厳しく、一般的には適用するのが難しいといえます。

現実的には、以下のような方法を取ることで、相続する遺産を減らすことを模索することになるでしょう。

  • 遺言書を利用する
  • 遺留分を放棄してもらう
  • 遺留分を主張しないよう遺言書に「付言事項」を記載する
  • 財産をなるべく残さない

どのような方法がベストであるかは具体的な事情によって異なります。

まずは弁護士に相談し、ご自身にとってどのような方法がベストであるかを一緒に考えてみましょう。

あなたが最も望む形にするために、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

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