多額の借金を残して親族が亡くなった場合などは、相続放棄を考える方もいることでしょう。
そして、可能であれば自分で相続放棄の手続きをしたいと考える方もいるかもしれません。
相続放棄の手続きは管轄の家庭裁判所に必要書類を提出して申し立て、裁判所から送られてくる照会書に回答すれば完了します。
簡単な手続きであるように思えるかもしれませんが、期限があるなど、注意点もいくつかあるので慎重におこなう方がよいでしょう。
手続きに失敗して相続放棄ができない可能性もあるので、事前に必要な知識を身に付けてから取り組むか、弁護士に依頼することをおすすめします。
今回は相続放棄の手続き方法を紹介するほか、手続きを始める前に知っておくべき基礎知識や、相続放棄の注意点などについて解説します。
相続放棄の手続きは自分でおこなうこともできますが、手続きには期限があるうえ、必要な書類が多岐にわたるため、手間がかかります。
また、相続放棄は慎重に判断しないと損をしてしまう可能があるため、一度弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。
- 相続放棄の手続きの流れがわかる
- 相続放棄以外の選択肢を知れる
- 依頼すれば、相続放棄すべきかどうか判断してもらえる
- 依頼すれば、相続放棄の手続きを全て任せられる
ベンナビ相続では、相続放棄を得意とする弁護士をあなたのお住まいの地域から探すことができます。無料相談・電話相談などに対応している弁護士も多いので、まずはお気軽にご相談ください。
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相続放棄の手続きをする前に知っておくべきこと
一度裁判所が相続放棄を許可すれば撤回はできません。そのため、そもそも本当に相続放棄をするのが適当なのかは慎重に検討し、判断する必要があります。
まずは相続放棄の手続きを始める前に知っておきたい相続放棄についての基礎知識を紹介します。
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄にはメリットもデメリットもあります。両方を知り、本当に相続放棄をするのがベストな選択なのか、正しく判断しましょう。
相続放棄のメリット
相続放棄には以下のようなメリットがあります。
- 借金などマイナスの財産を相続せずに済むので、不利益を被らずに済む
- ほかの相続人と関わる必要がなくなる
相続放棄をすれば、被相続人のあらゆる財産についての相続権を放棄することとなるため、マイナスの財産を相続せずに済みます。
たとえ被相続人が莫大な借金を残していたとしても、一切負担する必要がないのは大きなメリットといえるでしょう。
さらに相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことと同じ扱いになります。そのため、相続人同士の争いに巻き込まれる心配もないでしょう。
また、手続き自体も単独でできるので、ほかの相続人と全く関わらずに済みます。
相続放棄のデメリット
相続放棄には以下のようなデメリットもあります。
- プラスの財産の相続も放棄することになる
- 一度認められると撤回できない
- 自分が相続放棄をすれば、ほかの親族に相続権が移り、負担をかける
相続放棄とは全ての財産についての相続権を放棄する手続きです。
相続放棄をすれば、借金などのマイナスの財産だけでなく、プラスの財産についての相続権も放棄することになります。
そのため、後になってプラスの財産の方が多いと発覚しても受け取れません。相続放棄は撤回できないのであとの祭りです。
さらに、ご自身が相続放棄をし、ほかに同順位の相続人がいなければ、相続権は相続順位が次になる親族に移ります。
新たに相続人となった方も相続したくなければ、自分で相続放棄の手続きをしなければなりません。ほかの親族に負担を掛けることになるのもデメリットといえるでしょう。
なお、相続順位とは相続人になる優先順位のことで、その順位は以下のとおりです。
相続順位 |
相続人 |
第1順位 |
子どもや孫などの直系卑属 |
第2順位 |
親や祖父母など直系尊属 |
第3順位 |
兄弟姉妹 |
また、配偶者は必ず相続人となります。
相続放棄を検討したほうがいいケース
次のようなケースでは、相続放棄を検討するのがおすすめです。
- 財産調査の結果、明らかにマイナスの財産が超過する
- ほかの相続人と関わりたくない
- 特定の相続人に遺産を相続させたい
マイナスの財産の方が多い、相続争いに巻き込まれたくない、といった相続放棄をするメリットが明らかに大きいケースでは相続放棄をするのがよいでしょう。
ほかに、被相続人がおこなっていた事業を特定の相続人が引き継ぐケースでは、承継者に財産を集中させるために、ほかの相続人が相続放棄をすることもあります。
相続放棄を急がないほうがよいケース
次のようなケースでは、慌てて相続放棄を選択するのはおすすめできません。
- 財産調査をしてもプラスとマイナスでどちらが多いのか判断できない場合
財産調査は被相続人が遺した各財産の評価額を算出し、それらを合計して遺産総額を求めるものです。
そのため、不動産や株式など評価額の算定が難しい財産を含むケースでは、相続放棄をすべきか判断しにくいでしょう。
そのような場合は焦って結論を出すのはよくありません。安易に結論を出して後悔しないためにも、専門家に相談しながら慎重に進めましょう。
弁護士なら財産調査も依頼可能|相続問題が得意な弁護士探しは「ベンナビ相続」
不動産など評価の難しい財産がある場合、財産調査を自分でおこなうのは大変なものです。そのようなケースでは相続手続きを弁護士に依頼する方がよいでしょう。
弁護士に依頼すれば、相続放棄手続きはもちろん、財産調査もおこなってもらえます。
難しい評価額の算定も正確におこなってもらえるので、相続放棄をすべきかどうかの判断を誤る心配もないでしょう。
また、相続問題を弁護士に相談するなら、「ベンナビ相続」の利用がおすすめです。「ベンナビ相続」には相続問題を得意とする全国の弁護士が掲載されています。
相談内容や地域によって絞り込めるので、相続問題の解決実績が豊富な、お近くの弁護士を探せます。相続放棄をはじめ、相続問題でお困りの方はぜひご活用ください。
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相続放棄すべきかの判断が難しい場合は限定承認を利用しよう
財産調査をしてもプラスとマイナスではどちらの財産の方が多いのかわからなければ、限定承認という相続方法を選択する方法があります。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナス分を清算する手続きです。たとえプラスの財産を大幅に上回る額の借金が残っていたとしても、相続人が債務を負う心配はありません。
一方、マイナス分よりもプラスの財産の方が多かった場合は、マイナス分を返済した残りの額を相続できます。
便利な方法ではありますが、手続き自体は煩雑で、手間がかかります。申し立てには、ほかの相続人の同意も必要な点も大変です。
気軽に利用できる方法とはいえないため、限定承認を考えるなら、弁護士に相談する方がよいでしょう。
相続放棄の手続きの準備
家庭裁判所に相続放棄を申し立てる前に、下記のような準備が必要です。
相続放棄の手続きに必要な書類を用意する
まずは、相続放棄の申し立てに必要な書類を準備しましょう。
必要な書類
提出書類は申立人と被相続人との関係に応じて異なるものもありますが、下記の書類はどのような場合も必要です。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申立人の戸籍謄本
相続放棄の申述書は裁判所の下記ページよりダウンロードできます。記入例も掲載されているので、参照するとよいでしょう。
【参考】
裁判所ホームページ|相続の放棄の申述書(成人)
裁判所ホームページ|相続の放棄の申述書(未成年者)
申立人が被相続人の配偶者の場合に必要な書類
被相続人の配偶者が申し立てをする場合は、ほかに下記の書類が必要です。
- 被相続人の死亡の旨が記載された戸籍謄本
申立人が被相続人の子どもや孫(代襲者)の場合に必要な書類
被相続人の子どもや孫が申し立てをする場合は、ほかに下記の書類を準備します。
- 被相続人の死亡の旨が記載された戸籍謄本
【申立人が孫やひ孫で代襲相続が起こっている場合】
- 本来の相続人(孫の場合は親、ひ孫の場合は親と祖父母)が亡くなった旨が記載された戸籍謄本類
申立人が被相続人の両親や祖父母(直系尊属)の場合に必要な書類
被相続人の親や祖父母など直系尊属が申し立てる場合は、下記の書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類
【被相続人に子や孫がおり、すでに死亡している場合】
- その子や孫の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類
【被相続人の親がすでに死亡しており、祖父母が相続人となる場合】
- 被相続人の両親が死亡していることがわかる戸籍謄本類
申立人が被相続人の兄弟姉妹やおい・めいの場合に必要な書類
被相続人の兄弟姉妹が申し立てをする場合に必要な書類は下記のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類
- 被相続人の親など直系尊属がすでに亡くなった旨が記載された戸籍謄本類
【被相続人に子や孫がおり、すでに死亡している場合】
- その子や孫の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類
【申立人がおいやめいで代襲相続が起こっている場合】
- 本来の相続人である兄弟姉妹が亡くなった旨が記載された戸籍謄本類
相続放棄の手続きにかかる費用を用意する
相続放棄の申し立て手続きにかかる費用も用意しておきましょう。
手続きを自分でおこなう場合にかかる費用の目安と弁護士に依頼した場合の弁護士費用について紹介します。
相続放棄の手続きを自分でやる場合
相続放棄の申し立て手続きを自分でおこなう場合、以下の費用がかかります。
- 収入印紙 800円分
- 連絡用郵便切手(金額は裁判所による)
- 添付書類取得費用 数千円程度
まず申し立て費用として800円分を収入印紙で納める必要があります。相続放棄申述書の所定の欄に貼付して提出しましょう。
また、連絡用の郵便切手も納めなければなりませんが、金額や内訳は裁判所によって異なります。
申し立てをする予定の家庭裁判所のホームページを確認するか、掲載されていない場合は、電話などで直接問い合わせて確認しましょう。
また申し立て時に添付する必要のある、住民票や戸籍謄本類の取得費用もかかります。それぞれの1通あたりの費用は以下のとおりです。
書類 |
費用 |
住民票 |
300円程度(市区町村による) |
戸籍附票 |
300円 |
戸籍謄本 |
450円 |
除籍謄本 |
750円 |
改製原戸籍 |
750円 |
相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合
相続放棄の手続きは弁護士に依頼すれば、必要書類の収集や申立書の作成、提出から照会書の回答まで、全ての手続きをおこなってもらえます。
その場合の弁護士費用の相場は5万円から10万円程度でしょう。正確な費用は法律事務所によって異なります。
相談に訪れた際に見積もりを教えてもらうとよいでしょう。
自身で相続放棄の手続きをおこなう流れ
相続放棄の手続きはそれほど煩雑でもないため、自分でおこなう方もいます。一般的な相続放棄手続きの流れについてご紹介します。
家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
必要な書類が準備できたら、家庭裁判所に申し立て書類を提出します。申し立てをする裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
管轄の裁判所は、下記のページより調べられます。
【参考】裁判所ホームページ|裁判所の管轄区域
相続放棄の申し立ては郵送でも可能
管轄の家庭裁判所が遠方のこともあるでしょう。そのような場合はわざわざ赴かなくても、郵送で申し立てられます。
申立書を郵送する際は、レターパックや簡易書留、特定記録など追跡サービスが付いたものの利用がおすすめです。
相続放棄を申し立てたあとに照会書が届く
裁判所に申し立てが受け付けられれば、10日から2週間ほどで、相続放棄照会書が届きます。
照会書に必要事項を記入して返送する
相続放棄照会書には、本人の意思に基づいて申し立てがなされているか、相続財産の状況を把握したうえでの判断か、相続放棄を認められない行為をしていないかなどを確認する質問が記載されています。
これらの質問に対しては過不足なく正確に答えなければなりません。適当に回答をし、裁判所が不適当だと判断すれば相続放棄の申述が却下される場合もあります。
そのような事態を避けるためにも、照会書を返送する前に弁護士に回答内容を確認してもらっておくと安心です。
相続放棄が許可されると相続放棄申述受理通知書が届く
照会に対する回答に問題がなければ、裁判所に相続放棄を認めてもらえます。相続放棄が許可されれば、裁判所から相続放棄申述受理通知書という書類が届くでしょう。
相続放棄申述受理通知書を受け取れば、相続放棄の手続きは無事完了となります。
相続放棄の手続きで注意すべき5つのポイント
確実に相続放棄をするためにも、知っておきたい注意点があります。
単純承認事由に当てはまる場合は相続放棄できない
以下のような場合は、民法第921条で定められている単純承認事由に当てはまるとされ、相続放棄は認められません。
- 相続財産の全部、または一部を処分した場合
- 3ヵ月以内に相続放棄の手続きをおこなわなかった場合
- 相続財産を隠匿や消費、故意に相続財産の目録に記載しなかった場合
これらに当てはまるケースでは、プラスもマイナスも含めた全ての遺産を相続しなければならなくなります。
相続放棄の手続き期限|相続を知ってから3ヵ月以内
相続放棄の申し立てには期限があります。自分が相続人であると知ってから3ヵ月以内に申し立てをしなければ相続放棄はできなくなります。
相続放棄の手続きに3ヵ月以上かかってしまいそうな場合
財産調査に時間がかかるなどして、相続放棄をすべきかどうかを3ヵ月以内に判断できそうにない場合は、期間の伸長を申し立てれば、申し立て期限を延長できます。
ただし、伸長の申し立ても自分が相続になったことを知ってから3ヵ月以内におこなわなくてはなりません。
相続放棄の申述申し立てをする場合と同じく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てましょう。
申し立てに必要な書類については、下記裁判所のホームページをご参照ください。
【参考】裁判所ホームページ|相続の承認又は放棄の期間の伸長
相続放棄の手続き期限を過ぎてしまった場合
手続き期限を経過してしまうと、申し立てをしても基本的に相続放棄は認められません。
ただし、相続人が遺産はないと思い込んでいて、そこに一切の過失がない場合など、例外的に認められるケースもあります。
諦めずに弁護士に相談するとよいでしょう。
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相続放棄をしたら自分の次に相続人になる方に連絡しよう
自分が相続放棄をし、同順位の相続人がいなければ、相続権は次の順位の相続人に移ります。
次に相続権を得た方が、突然借金の請求をされても驚くでしょうから、自分が相続放棄をしたら、その旨を先に連絡しておくと親切です。
とはいえ、親戚関係が疎遠であれば、連絡するのもおっくうなものでしょう。
次の相続順位の方への連絡は義務ではありませんが、気になる場合は手続き全てを弁護士に依頼するのもよいかもしれません。
弁護士に相談すれば、ほかの相続人への連絡も併せておこなってもらえるはずです。
相続人が全員相続放棄をすると財産は国のものになる
相続人全員が相続放棄後に財産が残った場合、その財産は民法第959条で定められているとおり、国庫に帰属します。
意図せずして国に寄贈してしまわないためには、財産調査はきちんとおこなうことが大切です。
相続放棄は手続きをして終わりではない
相続放棄をしても不動産など管理すべき財産の管理義務まで同時になくなるわけではありません。
相続人が決まるか相続財産管理人が選任されるまでは遺産の管理責任があります。
相続放棄の手続きを楽に済ませるなら弁護士への依頼がおすすめ
相続放棄の手続きは煩雑なものではないため、自分でおこなうこともできます。
しかし、失敗できないうえ、財産調査や申し立て書類の収拾など手間のかかることも多く、負担に感じる方もいるでしょう。
手間なく確実に相続放棄をするためにも、相続放棄手続きは弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士に依頼すれば、申し立てなどの手続きのほか、財産調査や必要書類の収拾から手続き完了後のアフターフォローまで全て任せられます。
また、そもそも相続放棄をするのがベストかどうかのアドバイスももらえるので、後悔しない選択ができるでしょう。
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まとめ
相続放棄の手続きはそれほど難しいものではありません。
必要な書類をそろえて家庭裁判所に申し立てをし、裁判所から送られてくる照会書に回答すれば完了します。
しかし、申し立ては3ヵ月という期限内におこなわねばならなかったり、照会書には正確に回答する必要があったりするなど、注意すべき点もいくつかあります。
また、相続放棄が本当に適切な選択かどうかは、財産調査を十分におこなったうえで慎重に判断しなければなりません。
相続放棄の手続きで後悔しないためにも、まずは弁護士に相談や依頼する方がよいでしょう。
相続放棄を考えているなら、ぜひ「ベンナビ相続」を利用し、お近くの弁護士に相談してみてください。
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