親が認知症を発症してしまったり、判断能力が低下してしまった場合に、きちんと財産の管理ができるようにするのが成年後見人制度です。
ただし、後見人制度は当事者だけで進めることは非常に難しいのが実情です。
制度の内容も複雑なため、そもそも成年後見人制度がどのようなものなのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、成年後見について無料で相談する方法や相談先ごとの違い、手続きをするうえで注意したほうがよい点についてわかりやすく解説します。
「どこから始めてよいのかわからない」という方のために手続きの進め方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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成年後見について相談できる専門家
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弁護士 |
司法書士 |
行政書士 |
市町村の相談窓口 |
必要書類の収集 |
〇 |
〇 |
〇 |
× |
必要書類の作成 |
〇 |
〇 |
× |
△ |
登記 |
△ |
〇 |
× |
× |
申し立て手続き |
〇 |
△(代行は可能) |
× |
× |
成年後見人への就任 |
〇 |
〇 |
△ |
△ |
成年後見について相談できる専門家は、主に弁護士・司法書士・行政書士があります。
また、地方自治体に設置されている法律の相談窓口を利用するという手もあります。
ここでは、それぞれどのような特徴があるのかを解説します。
弁護士|紛争になった際に代理人として交渉できる
弁護士は依頼できる業務や相談できる内容の幅が最も広く、契約に関わる業務を全て一任できます。
そのため、日中仕事や介護で忙しく、手続きを全てすべてをお任せしたい方におすすめです。
また、依頼者の代理人として交渉することもできるのも魅力のひとつです。
「親が不要な物を押し売りされてしまった」「不当な契約をさせられた」など、法律に絡むようなトラブルに備えたいという方にもおすすめといえます。
弁護士に無料で相談する方法
弁護士に無料で相談したい場合は、「ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)」を利用するのがおすすめです。
ベンナビ相続とは、相続案件に注力している弁護士を検索できるサービスで、住んでいる地域と依頼内容を選択するだけでご自身にマッチした弁護士を簡単に探すことができます。
また、経済的に弁護士を雇うことが難しい場合は、法テラスを利用するのも手です。
法テラスとは国が設置した法律の相談窓口のことで、収入や資産などの基準をクリアすれば無料で弁護士に相談することができます。
また、弁護士費用の立て替えといった制度もあるので、まとまった資金を一度に用意できない場合は、このようなサービスを活用するとよいでしょう。
ほかにも、各都道府県の弁護士会や地方自治体がおこなっている無料の相談会を利用するという方法もあります。
ただし、事前に予約が必要なため、気になる方は弁護士会や地方自治体のホームページを確認してください。
参考:日本弁護士連合会
司法書士|成年後見に関する幅広い業務ができる
成年後見人の相談をする場合は、司法書士に相談するのもおすすめです。
とくにリーガルサポートという団体の会員司法書士は、成年後見業務のスペシャリストであり、高い専門性とサポートに期待ができます。
成年後見に関する業務はひととおりカバーしており、弁護士よりも費用は安めなため、バランスの取れた専門家といえます。
ただし、弁護士と違い依頼人の代わりに交渉するといったことができないため、成年後見によってトラブルが起きそうな場合は注意が必要です。
司法書士に無料で相談する方法
司法書士に無料で相談したい場合は、リーガルサポートが実施している無料相談を利用するとよいでしょう。
都道府県によって面談や電話などと相談方法が異なるので、リーガルサポートのホームページで事前に条件を確認してください。
行政書士|書類の作成を依頼できる
成年後見の相談先としては、行政書士も候補に挙がります。
行政書士ができるのは成年後見制度を利用するための必要書類の収集や契約書作成の相談、成年後見人の就任などです。
つまり、成年後見を開始するにあたり必要な事務作業を請け負うことが可能です。
その代わり、書類の作成や裁判所への申立手続きなどは依頼できないため、あくまで成年後見をするためのサポートをしてほしい方におすすめといえます。
行政書士に無料で相談する方法
各都道府県に設置されている行政書士会が無料の相談会を実施しているため、こういったサービスを活用するのがおすすめです。
また、成年後見のサポート団体であるコスモス成年後見サポートセンターの無料相談を利用する方法もあります。
どちらも都道府県によって無料相談会の条件や方法が異なるため、公式ホームページから内容を確認しておきましょう。
参考:日本行政書士会連合会
社会福祉協議会|成年後見に関する一般的な相談ができる
各地域に設置されている地域包括支援センターや社会福祉協議会でも成年後見に関する相談ができます。
「申し立ての手続きがわからない」「どのような書類を用意すればよいのかわからない」など、成年後見に関する一般的な相談を受け付けてくれます。
弁護士と司法書士、どちらに依頼すればいい?
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弁護士 |
司法書士 |
費用の目安 |
20万円前後 |
10万円前後 |
おすすめの人 |
・トラブルに発展する可能性がある方 ・成年後見に関するあらゆる業務をお任せしたい方 |
・交渉以外の業務をお任せしたい方 |
弁護士や司法書士は、ともに成年後見に関する幅広い業務を請け負うことができるため、成年後見の相談先や成年後見人の候補としてよく挙げられます。
弁護士と司法書士のどちらを選べばよいかは、依頼できる業務と費用を総合的に考えて、より納得できるほうに決めるのがおすすめです。
弁護士に依頼したほうがよい方
「成年後見に関する業務を全てお任せしたい」という方は、弁護士が向いています。
基本的に業務の範囲に差はないものの、弁護士は代理人として手続きできるため、契約書の作成や書類の提出なども代わりに請け負うことができます。
また、依頼者に代わって交渉することもできるので、成年後見によってトラブルが起きそうな場合や、自分の意志を周りにうまく伝えられる自信がない方にもおすすめとえいます。
司法書士に依頼したほうがよい方
司法書士は、サポートを受けながら手続きを進めたい方におすすめです。
ただし、司法書士は弁護士と異なり代理人ではないため、裁判所への申し立て手続きなどは基本的に自分がやる必要があります。
そこまで難しい作業ではありませんが、ご自身で手を動かす時間が必要になります。日中忙しくて手続きする暇がない、という方は弁護士のほうが向いているでしょう。
一方で、費用は弁護士よりも安く済むことが一般的で、おおむね10万円は節約可能です。
そのため、できることは自分でやりたいという方には司法書士が向いているでしょう。
成年後見する際の流れ
成年後見は書類を準備し後見人の審査を受け、問題なければ後見登記をおこない、成年後見人が職務を開始するという流れが一般的です。
それぞれの段階に分けて詳しく解説します。
書類の準備をして申し立てをおこなう
まずは、成年後見の申請に必要な書類を集めます。主な必要書類は以下のとおりです。
なお、家庭裁判所によって異なる部分があるため、依頼した専門家も指示に従い、所定の方法で用意してください。
【成年後見の申請に必要な主な書類】
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成年後見の申請について審理を受ける
必要書類と申立書をそろえて、家庭裁判所に提出します。
必要書類の提出は、直接持ち込むほかにも、郵送することも可能です。
家庭裁判所は受理した書類に基づき、後見人候補者や本人などについて審理を開始します。
家庭裁判所の調査官と面談し、後見制度を利用する妥当性や本人の判断能力の確認をおこないます。
審判が下される
家庭裁判所は受理した書類や面談など、さまざまな事情を総合的に判断して、成年後見人を選任します。
そのため、必ずしも申し立て時に立てた候補者が後見人になれるわけではありません。
後見登記をおこなう
後見人の内容が確定したら、法務局に出向き審判内容を登記してもらいます。
1ヵ月以内に後見人が財産目録を作成し提出する
後見人は選任後1ヵ月以内に、本人の財産調査と財産目録の作成する必要があります。
財産目録を家庭裁判所に提出すると、後見人による財産の管理が開始します。
成年後見する際の注意点
成年後見には、本人に代わって財産の管理ができるというメリットがありますが、注意しなければならない点もあります。
途中でやめることができない
成年後見制度は、一度開始すると途中でやめることができません。
あとになってから「後見人が気に入らないからやめたい」といったことはできないため、後見人の選定は慎重におこなう必要があります。
柔軟な対応が難しい場合がある
財産の管理は後見人ができますが、不動産の売却などは裁判所の許可が必要です。
あくまで管理を任されているだけであり、自由に何でもできるというわけではないため注意しましょう。
後見人には報酬が発生する
成年後見人に弁護士や司法書士が選任された場合、毎月数万円の報酬が発生します。
途中でやめることができないという後見人制度の特徴を踏まえ、今後費用を払い続けられるかどうかはよく考えておく必要があります。
まとめ|成年後見は弁護士と相談して手続きしよう
成年後見人は、親に意思決定能力がなくなった際に、本人以外が財産の管理ができるようになる便利な制度です。
一方で、手続きが複雑であることや、制度を利用するうえで気をつけなければならない点があるため、弁護士と相談しながら手続きを進めるのがよいでしょう。
現在は無料で相談する方法もたくさんあり、以前よりも気軽に相談しやすくなってきています。
大事な財産を適正に管理するためにも、まずは相談することから始めてみるのがおすすめです。
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