離婚時の財産分与は、適切な計算をして請求しなければいけません。
基本的には2分の1で平等に財産を分けますが、話し合いによっては別の割合で財産分与することも可能です。
今回の記事では、財産分与の基本的な知識を解説した上で、財産分与を弁護士に依頼するメリットを解説します。
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財産分与の基本知識
まずは、財産分与の基本的な知識について理解しておきましょう。
財産分与には、種類や対象財産など、理解しておくべき知識がいくつもあります。
以下では、財産分与について理解しておきたい4つの知識と、基本的な流れについて解説します。
財産分与3つの種類
財産分与と一重にいっても、細かく分けると3つの種類があります。
- 清算的財産分与…夫婦が協力して築いた財産を、それぞれの寄与の程度に応じて公平に分配する財産
- 扶養的財産分与…離婚後の生活に経済的な不安が残る場合、金銭を補充して一方の離婚後の生活維持を図るための財産
- 慰謝料的財産分与…相手方が慰謝料を支払う義務を負う場合の財産
生活などに問題がない場合は、清算的財産分与のみになります。
生活に問題があったり、相手方に離婚の原因があったりする場合には、不要的財産分与や慰謝料的財産分与も加味されます。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象は、基本的に夫婦が互いに協力して得た「共有財産」になります。
離婚の際に手元にある財産全てが共有財産になるわけではありません。
共有財産として財産分与の対象になるのは、以下のような財産です。
- 不動産(一方が婚姻前から有していた財産や親族からの援助である場合は対象に含まれない可能性がある)
- 自動車・有価証券・絵画など(婚姻期間中に取得したもののみ)
- 保険料
- 退職金(もらった退職金の半分を分与するわけではない)
- 年金
- 現金・預貯金(名義人は問わない)
- 家電・家具
基本的には上記の財産が対象になりますが、不動産のように購入原資によって異なる場合があります。
財産分与の割合は原則2分の1
財産分与の割合は、基本的に2分の1です。
夫婦がどの程度貢献したのかを加味して決めますが、一般的には2分の1とされています。
そのため、夫の収入だけで生活していて妻が専業主婦である場合においても、2分の1の財産を受け取れます。
ただし、財産分与の割合は具体的な事案ごとに異なるため、必ずしも2分の1になるとは限りません。
個別具体的な事情によっては、割合が修正されるケースもあります。
また、協議や調停でお互いの合意があれば、自由な割合で財産分与できます。
財産分与の相場は100万円以下
財産分与の相場については、夫婦間の財産によって異なるため、一概にいくらと言い切れません。
ただし、司法統計年報27令和元年度「財産分与の支払額別婚姻期間別」によると、以下のような結果が出ています。
- 婚姻期間が5年未満の場合…100万円以下が半数
- 婚姻期間が20年以上…1,000万円以上が半数
婚姻期間が長ければ長いほど蓄積される財産が多くなるので、婚姻期間が長い方が受け取れる財産の額は大きくなります。
【参考】第27表 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の支払額別婚姻期間別―全家庭裁判所
財産分与の基本的な流れ
財産分与は、基本的に夫婦間で話し合いをして決めていきます。
しかし、話し合いがまとまらない場合には、調停や裁判をおこないます。
基本的な流れは、以下のとおりです。
- 対象となる財産の確認
- 夫婦による話し合い
- 話し合いでまとまらない場合、離婚前であれば離婚調停、離婚後であれば財産分与請求調停
- 調停でまとまらない場合、離婚前であれば「裁判」、離婚後であれば「審判」
上記の流れで財産分与の額を決めていきます。
財産分与を相談できる窓口は主に3つ
財産分与で納得のいく財産を受け取るためには、財産の確認や話し合いなどをしなければいけません。
お互いに合意を得た際には書面に残した方がよいですが、誤解の生じない公正な書面を作成するのは困難です。
さらに、調停や裁判になってしまうと、場合によっては納得のいく財産を受け取れないかもしれません。
そのため、財産分与をおこなう際には、専門家に依頼することをおすすめします。
以下で3つの相談窓口を紹介するので、ぜひ相談を検討してみてください。
財産分与に関する全てを任せるなら弁護士
財産分与に関する全てを任せたいなら、弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士であれば、以下のようなケースにも対応可能です。
- 財産の分配方法で揉めている
- 相手が財産を隠している可能性が高い
- 財産分与だけではなく離婚問題も全て解決したい
- 調停や裁判に発展する可能性がある
弁護士は、財産分与だけではなく離婚問題における全てを任せられるので、離婚が決まった段階で相談しておくとよいでしょう。
費用に不安がある場合は法テラス
離婚問題や財産分与については、弁護士への依頼が最良の選択といえます。
しかし、弁護士に依頼する場合は費用がかかってしまうため、費用の面から依頼できない人もいるでしょう。
もし費用面がネックになっている場合は、法テラスを利用しましょう。
法テラスは、国が設立した法的トラブルを解決するための総合案内所です。
収入や資産の額が基準を満たす場合であれば、法テラスが弁護士費用を立て替えてくれます。
立て替え費用は後々分割払いで法テラスに支払います。
書面に残すだけなら行政書士
離婚協議書や財産の分配方法、取得割合の条件について適正な書面を残すだけなら、行政書士への依頼もよいです。
行政書士は書類作成のプロなので、離婚や財産分与に関する書面を作成してくれます。
弁護士と比べれば軽度の業務であるため、比較的安い費用で依頼できる点もメリットです。
弁護士のように第三者の介入が必要でない場合は、行政書士のみに依頼するのもよいでしょう。
財産分与を弁護士に依頼するメリット
財産分与を相談できる窓口はいくつかありますが、財産分与の全てを任せられるのは弁護士です。
弁護士に依頼すれば、財産分与に関わる資料作成から隠し財産の調査、調停や裁判の代理までおこなってくれます。
そのほかにも、財産分与を弁護士に依頼するメリットはあるので、以下で解説します。
交渉がスムーズに進みやすい
弁護士は、相手との交渉の代理人となってくれます。
そのため、感情的な話し合いではなく、法的観点から解決できます。
代理人を挟まず当事者だけで話し合いを進めてしまうと、感情論が先行してしまったり決めるべき部分を決められなかったりしてしまい、交渉が進まなくなってしまう事態も想定されます。
弁護士に依頼すれば、交渉力と法律知識から、有利かつスムーズに話し合いがまとまるでしょう。
正確な共有財産を把握できる
財産分与の適正額は、とても複雑です。
基本的には2分の1になりますが、どちらかの収入が少ない場合は、財産分与の減額を求められるケースもあります。
また、財産分与の対象に不動産が含まれている場合は評価額によっても財産分与の額が異なります。
財産分与の条件や適正な金額については法律観点から検討すべきポイントがたくさんあるので、正確かつ適正な共有財産を把握するためにも、弁護士への依頼を検討した方がよいでしょう。
大きな財産を得られる可能性が高くなる
財産分与の割合は、2分の1になるとは限りません。
財産分与に関する取り決めは、夫婦間の合意があれば自由内容でおこなえます。
また、調停や審判など裁判所を介して取り決めをおこなう場合も、個々の事情によって割合は変動します。
たとえば、夫婦共働きで妻側が家事などをほぼおこなっていた場合は、妻側の貢献度が高いとみなされ、財産分与の割合が多くなる可能性があるのです。
このような貢献度の観点は当事者間でまとまりにくい内容なので、弁護士に依頼した上で交渉するとよいでしょう。
公正証書の作成もサポートしてもらえる
財産分与や離婚条件などの合意が得られたら、離婚公正証書を作成した方がよいです。
公正証書は、合意内容を明確にし、後日のトラブルを防ぐ機能があります。
原本は公証役場で保管されるため、改善されるリスクもありません。
しかし、公正証書をどのようにまとめるべきかわからない方も多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、法的に重要な部分を抑えた公正証書の作成が可能です。
公証役場への申し込みも弁護士がおこなってくれるので、大幅に手間を省けます。
調停・裁判に発展した際も任せられる
弁護士に依頼しておけば、調停や訴訟に移行した場合も任せられます。
また、財産分与だけではなく、離婚調停や離婚訴訟などについても一任できます。
訴訟や調停は専門性の高い手続きなので、弁護士へ依頼しておくべきです。
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財産分与を弁護士に依頼した場合の費用相場
財産分与を弁護士に依頼した場合には、主に以下の費用がかかります。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 日当・実費
依頼する段階や弁護士によっても異なりますが、以下では費用の目安について解説します。
相談料の相場は無料~5,000円
相談料は、30分0円~5,000円が相場です。
30分5,000円としている法律事務所が多いですが、昨今では相談無料の法律事務所も増えてきています。
ただし、相談料については、あくまで相談のみとなり、実務まではおこないません。
着手金の相場は請求額によって異なる
着手金は、弁護士に正式な依頼をした際に支払う費用です。
財産分与の請求に関する着手金は、経済的利益によって異なります。
経済的利益の額 |
着手金の目安 |
300万円以下 |
経済的利益の8.8% |
300万円~3,000万円 |
経済的利益の5.5%+9万9,000円 |
3,000万円~3億円 |
経済的利益の3.3%+75万9,000円 |
3億円以上 |
経済的利益の2.2%+405万9,000円 |
なお、着手金の最低額は11万円です。
報酬金は獲得額によって異なる
報酬金は、案件終了時に、得られた成果に応じて支払う費用です。
財産分与によって経済的利益を獲得できた場合には、その金額に応じた金額になります。
経済的利益の額 |
報酬金の目安 |
300万円以下 |
経済的利益の17.63% |
300万円~3,000万円 |
経済的利益の11%+19万8,000円 |
3,000万円~3億円 |
経済的利益の6.6%+151万8,000円 |
3億円以上 |
経済的利益の4.4%+811万8,000円 |
日当・実費の相場は3万円
日当や実費は、弁護士が出張したり案件対応に関して費用を支出したりした場合に支払う費用です。
- 日当…出張等
- 実費…郵送費/印刷費/公的書類の取得費/交通費/公証人手数料 など
日当・実費については一概にどの位かかるとは言い切れませんが、おおよその目安としては3万円~5万円ほどです。
財産分与に強い弁護士を見つけるためのポイント
財産分与を弁護士に依頼する際は、以下のポイントから弁護士を比較しましょう。
- 離婚問題に注力している
- 過去の実績が豊富
- 話しやすい・相性がよい
なぜそれぞれのポイントが重要なのか、以下で解説します。
離婚問題に注力している
財産分与を依頼するなら、離婚問題に注力している弁護士に依頼しましょう。
離婚問題に注力している弁護士であれば、財産分与の解決実績も多いと考えられます。
弁護士といっても、刑事事件・民事事件などと得意分野が分かれているので、とくに離婚や財産分与を得意としている弁護士を選んでください。
過去の実績が豊富
弁護士の得意分野を見極める方法として、過去の実績を確認する方法があります。
ほとんどの弁護士であれば、公式ホームページなどで過去の解決事例が掲載されています。
過去の事例で財産分与や離婚を多く扱っているようであれば、心配はないでしょう。
また、離婚問題についての書籍出版やメディア出演の実績があれば、得意分野である可能性が高いといえます。
話しやすい・相性がよい
離婚や財産分与の問題は、非常にデリケートな内容です。
そのため、話やすさや相性の良さも重視しましょう。
事務的に進めるような弁護士では、離婚に関する感情的な部分や金銭的な悩みなどを相談しにくいです。
そのため、弁護士を決める際には、一度相談をしてから決めるとよいでしょう。
先述したように無料相談をおこなっている法律事務所も多いので、まずは一度相談してみてください。
相談したからといって依頼をしなければならないわけではありません。
今後一緒に進めていく上で相性はとても重要なので、慎重に検討してください。
適切な財産分与をおこなうなら弁護士に相談
財産分与を当事者間だけでおこなおうとすると、適切な財産分与ができない可能性があります。
また、財産分与の手続きもとても手間がかかるものです。
そのため、財産分与をおこなう際には、弁護士への依頼をおすすめします。
法テラスや行政書士への相談もできますが、具体的な財産分与の手続きまで代行してくれるのは弁護士のみです。
財産分与について手間を感じたり不利な財産分与になりそうだと感じたりしたら、まずはお気軽に弁護士までご相談ください。
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