相続放棄をしたのに請求がくる|請求への対処法と放棄後に注意すべき点 | ベンナビ弁護士保険  
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相続放棄をしたのに請求がくる|請求への対処法と放棄後に注意すべき点

「相続放棄をしたと伝えたにも関わらず、被相続人の債権者からの請求が止まらない」

しつこく請求が続くと、もしかして返済義務があるのかと、不安になってしまうことでしょう。

しかし、相続放棄をしたのなら、一切の支払い義務を負いません

返済義務のない債務の支払いをしつこくせまるのは違法行為にあたります。

この記事では、以下の2点について詳しく解説します。

  • 相続放棄したのに債務の支払いを請求された時の対処方法
  • 相続放棄が適切におこなわれたか確認する方法

記事を読み、自分に支払い義務がないと確信できれば、毅然とした態度で請求を拒否することができるでしょう。

相続放棄後に返済してしまった場合の対処法についても解説しますので、すでに支払ってしまった方もぜひ参考にしてみてください。

【注目】相続放棄後の請求にお悩みの方へ

相続放棄をしたのに債務の請求が届いて、どうすべきかで困っていませんか?

結論から言うと、相続放棄をした場合、相続債権者への支払い義務は免除されます。しつこい請求にお悩みの場合は、弁護士に対応を相談するのがよいでしょう。

弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 債務の請求に対する対処法がわかる
  • 過度な請求に対して刑事告訴できるかわかる
  • すてに債務を支払ってしまった場合の対処も相談できる
  • 依頼すれば、対応を一任できる

ベンナビ相続では、相続放棄を得意とする弁護士をあなたのお住まいの地域から探すことができます。無料相談・電話相談などに対応している弁護士も多いので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士
野中 辰哲弁護士(アリアンサ法律事務所)
相続問題を中心に対応し、現在では年間約20〜30件ほどの案件に取り組む。遺産分割を始め、生前対策や相続放棄などの実績も多数。大学での非常勤講師を務めるなど、活動の幅は多岐に渡る。 https://souzoku-pro.info/offices/osaka/osakafu-hirakatashi/733/

相続放棄をすれば相続債権者への支払いは必要なし 

相続放棄をすれば、相続債務を支払う義務は一切免除されます。

相続債権者に請求されたら、「私は相続放棄をしたので支払いません」と答えましょう。

本来なら、これで解決するはずです。

遺産をもらえないというデメリットと引き換えに、債務の返済義務を免除されるというメリットを受けられるのが相続放棄の効果です。

被相続人に多額の負債があった場合には有効な解決方法となります。

被相続人の財産と債務は他の相続人に引き継がれ、他の相続人も放棄した場合は次順位の相続人に引き継がれます。

相続放棄すれば、あなたは最初から相続人ではなかったとみなされます。

相続放棄したのに債権者からしつこく請求を受けたときの対処法 

相続放棄後に相続債権者から請求を受けた場合は、相続放棄したことを示して支払い義務がないことを伝えましょう。

それ以降も取り立てが続くなら、一人で対応せず弁護士や警察に相談してください。

相続放棄をしたことを伝える

相続債権者には、まず自分が相続放棄をしたことを伝えましょう。

相手はあなたが相続放棄をしたことを知らずに請求しているかもしれません。

通常の債権者であれば相続放棄の知識があります。

相続放棄をしたとわかれば、それ以上請求してこないでしょう。

相続債権者から、支払い義務のある相続人の連絡先を聞かれることがあるかもしれません。

しかし、連絡先を教えるのは慎重に、本人に確認をとってからにした方がいいでしょう。

相続放棄受理証明書を提示する

相続債権者に対し、下記の書類どちらかを提出することで、あなたが相続放棄済みだと証明できます。

  • 相続放棄受理通知書の写し
  • 相続放棄受理証明書

相続放棄の受理後、判明している債権者がいれば、あらかじめ送付しておくとよいでしょう。

「相続放棄受理通知書」は、相続放棄を申請して正式に受理された際に、家庭裁判所から発行される書面です。

この書面が届けば、相続放棄が無事に完了したことが証明できます。

ほとんどの相続債権者は、相続受理通知書の写しを提示すれば請求してこなくなるでしょう。

しかし、まれに写しではなく原本が必要だといわれることもあります。

そのときは家庭裁判所から「相続放棄受理証明書」を取得して提示しましょう。

相続放棄受理通知書は1通しか発行されないため、原本を渡すことはできないからです。

相続放棄受理証明書は、手続きをした家庭裁判所に申請し取得できます。

手数料は1枚150円です。郵送で取り寄せる場合は、返信用切手を貼付した封筒を同封しましょう。

家庭裁判所の証明書を提出すれば、相続債権者も納得せざるをえません。

それ以降請求を受けることはないでしょう。(民法第939条

参照:その他の申請 | 裁判所

相続放棄受理通知書

相続放棄受理証明書

  • 相続放棄が受理された際に家庭裁判所から届く
  • 申請は不要
  • 無料
  • 1通のみしか発行されない
  • 相続放棄を家庭裁判所が証明する書類
  • あらためて申請する必要あり
  • 証明書1通につき収入印紙150円が必要
  • 枚数制限はない

強要罪での刑事告訴を検討する

支払い義務のない相手とわかっていて請求を続ける行為は違法です。

相続放棄済みであることを示してもしつこく請求が続く場合は、毅然とした態度で支払いを拒絶しましょう。

場合によっては「強要罪(刑法第223条)」で刑事告訴をも辞さない態度で臨むべきでしょう。

生命・身体・名誉や財産などに危害を加えると告げて脅迫し、相手に義務のないことをおこなわせる行為は「強要罪」にあたり、3年以下の懲役刑に処せられます。

相続債権者の取り立て行為があまりにしつこく、身体や生命へ危害が加えられるのではないかと恐怖を感じた場合、強要罪として立件できる可能性は十分にあります。

刑事告訴も選択肢のひとつとして、まずは弁護士に相談し、判断を仰ぎましょう。

税金などの支払いの場合

相続放棄をすれば、被相続人が滞納していた税金や保険料も負担する義務はありません。

しかし、役所は誰が相続放棄をしているかを把握していません。

納税されないまま放置されていれば、相続人に請求してくるでしょう。

役所から請求が来た場合も、相続放棄受理通知書の写しもしくは相続放棄受理証明書を送ることで、その後の督促を止めることができます。

しかし固定資産税の場合には、注意が必要です。

固定資産税の納税義務があるのは、毎年1月1日の固定資産税課税台帳に名前のある人です。

課税台帳に登録されている人が1月1日に死亡していた場合、当該不動産を現に所有している人、つまり相続人が支払いの対象となります。

前年の12月末までに相続放棄が受理されていれば、役所に対して、「相続放棄が済んでいるため、初めから相続人ではなかった」と主張することが可能です。

しかし前年までに相続放棄が受理されず納付書が届いたら、支払いをしなければならない場合もあります。

相続放棄を法的に完了させるために注意すべき点 

自分で相続放棄をしたはずだと思っていても、相続債権者からしつこい請求を受けると不安になってしまうかもしれません。

基本的には手元に「相続放棄受理通知書」があれば、相続放棄が成立していると考えて問題ありません。

相続開始を知ってから3ヶ月以内におこなう

相続放棄には3ヶ月という期限があります。

3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申立て、その後家庭裁判所から「相続放棄受理通知書」が届いていれば正しく申請ができています。

しかし、被相続人と疎遠であったなど、放棄するか否かの判断が難しいこともあるでしょう。その場合は期間内に家庭裁判所に対して期限の延長を申し立てることができます。

債権者から請求を受けた後でも、相続放棄は可能

被相続人の債権者から請求を受けた後でも、相続開始を知ってから3ヶ月以内なら相続放棄をして支払いを拒否することは可能です。

注意すべきは、「債務があることを知ってから3ヶ月以内」ではないことです。

相続人になったと知ったときから3ヶ月以上経過した後に、被相続人に債務があったことを知っても、相続放棄はできません。

3ヶ月以内に相続放棄をおこなわなかったことは、法定単純承認とみなされるからです。(民法第915、921条

ただし、被相続人と疎遠であったなどの特別な事情を裁判所が認めた場合には、例外的に相続放棄が認められることもあります。

家庭裁判所への申請が必須|ただ遺産を相続しなかっただけではダメ

相続放棄は家庭裁判所に申請し、受理されることで初めて認められます。

ただ財産を引き継がなければ債務も負担しなくてよいというわけではありません。

被相続人の債務を引き継がないためには、3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。

申請場所や、申請に必要になる書類・費用は以下のとおりです。

管轄

被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所

手数料

収入印紙800円

提出書類

  • 相続放棄申述書(書式-相続放棄申述書 )
  • 被相続人の住民票除票等
  • 相続放棄申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍または除籍

そのほか、自分が相続人であることがわかる戸籍などが提出書類として必要です。

参考:相続の放棄の申述 | 裁判所

法定単純承認と思われる行動はとらない

相続放棄後に最も気を付けるべきことは、相続放棄により新たに相続人となった人の承認前に、「法定単純承認」にあたる行動をとらないことです。

相続放棄後したにもかかわらず、わざと相続財産を隠匿したり、自分のために消費したりすると、単純承認したものとみなされ、被相続人の権利義務の一切を承認したことになってしまいます。

ただし、自らの相続放棄後に新たな相続人が承認していれば、相続人が確定したことになるので、法定単純承認とはみなされません。

相続放棄をした人の行為によって相続財産に損害が発生した場合には、相続放棄をしていない他の相続人に対して、損害賠償しなければならなくなります。

相続放棄をした後は、被相続人の財産や負債には手を触れないようにしましょう。

相続放棄後に支払ってしまったお金を取り戻すのは可能? 

相続放棄をしたのに相続債権者に請求されて支払ってしまった場合、相続債権者に返金を求めることは難しいでしょう。

返済義務のない者からの返済でも、原則は有効だからです。

基本的にお金を取り戻すことはできない

相続債権者に対し、すでに支払った債務の返金を請求することはできません。

相続放棄をすると、さかのぼって「最初から相続人ではなかった」ことになります。

返済義務がない者からの返済は、「第三者弁済」として原則有効です。

これは、あなたに相続権があり、相続人からの有効な返済であると信じて返済を受けた相続債権者を保護するためです。

例外的にお金が返金される可能性はある

「第三者弁済」は、返済義務のある人からの返済だと信じた債権者の地位を保護するため、原則有効です。

しかし、相続債権者を保護する理由がなければ、返済無効を主張することができます。

税金などの公租公課の場合

被相続人が滞納していた税金や保険料を支払ってしまった場合、相続放棄をしたことを示せば、返金に応じてくれる可能性もあります。

返済義務のない債務の支払いは、相手が対抗しなければ返済を受けることができます。

しかし年末に被相続人が亡くなり、年をまたいで相続放棄が受理された場合には、支払ってしまった固定資産税の返済を受けることはできません。

詐欺や強迫を受けていた場合

詐欺や強迫による返済は無効にすることができます。(民法第96条1項

ただし、裁判になった際には詐欺や強迫行為があったことをこちらが証明しなければならないため、あらかじめ証拠を集めておく必要があります。

第三者弁済が無効になるとき

第三者弁済は、以下の場合に無効になります。

相続放棄をしていない相続人に支払った分のお金を請求する

あなたは一部返済をしたことにより、返済した分だけ相続債権者の地位を引き継いでいます(民法第499条)。

対して他の相続人は被相続人の債務者としての地位を引き継いでいます。

従って、相続債権者に請求することができなくても、相続放棄をしていない相続人に返金を請求することは可能です。

最後に|相続放棄後の請求に悩まされているなら弁護士にご依頼を!

相続放棄をしたら、一切の相続債務の支払い義務はありません。

相続放棄したのに相続債権者から請求を受けたら、相続放棄を証明する書類を提示して支払い義務がないことを伝えましょう。

それでも支払いをしつこく迫ってくる相続債権者がいるのなら、弁護士や警察に相談しましょう。

返済義務のない債務の支払いを迫るのは違法行為で、場合によっては刑事告訴も検討する必要があります。

もし自分が正しく相続放棄できているか不安になったら、以下の2点を確認しましょう。

  • 相続放棄受理通知書が家庭裁判所から届いている
  • 相続放棄の前後に遺産や相続債務に手を付けていない

この2点に該当していれば、相続放棄は有効に成立しています。

相続放棄が有効に成立しているのに、被相続人の債務を負担する必要はありません。

しつこい債権者には、毅然とした態度で断り続けましょう。

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